肺癌発症のリスクファクターは?:最大のリスクファクターは喫煙

近年、増加傾向にある肺癌発症のリスク要因についてまとめてみました。
非医療関係者も関心がある内容だと思います。
最大のリスクファクターは喫煙です。

はじめに

・肺癌は世界的に最も致死的ながんであり、日本では2012年の統計で全がん死の19%を占め、男性では全がん死の中で最も多く、女性では大腸癌について2番目を占めています。

肺癌の発症率は50歳以上で急激に増加します。日本人が生涯のうちに肺癌になる割合は男性で7.4%、女性で3.1%です。
(厚生の指標,2005:52(6):21-6)

喫煙

・最も強い肺癌のリスクファクターで、肺癌患者の90%に喫煙歴が存在すると報告されています。
(Chest. 2003; 123: 21S)

・非喫煙者に比べて、喫煙者が肺癌になるリスクは男で4.4倍、女で2.8倍と高いです。

(Jpn J Clin Oncol. 2006;36:309-24)

・タバコ1箱を40年以上喫煙している人の肺癌発症リスクは、非喫煙者のおよそ20倍と言われています。

・禁煙は、肺癌リスクを20-90%減少させます。
(Clin Chest Med. 1991;12:669.)

受動喫煙

・受動喫煙も、自分で喫煙することに比べるとはるかに小さいですが、肺癌の発症率を上げます。
(Int J Epidemiol. 2007;36(5):1048.)

受動喫煙の暴露を受けた人は、そうでない人に比べて肺癌リスクは約1.3倍に増加します。

(Tobacco Smoke and Involuntary Smoking, IARC Monographs Volume 83, 2004) (A Report of the Surgeon General, The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke 2006)

・暴露される受動喫煙量と肺癌リスクは相関関係にあります。

喫煙以外の原因

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の6〜18%に肺癌を合併し、COPDの死因の5〜38%が肺癌とされます。
(Proc Am Thorac Soc 2008;5:549-55)
(Eur Respir J 2006;28:1245-57)

・職業的暴露(アスベスト、ラドン、ヒ素、クロロメチルエーテル、クロム酸、ニッケル)、大気汚染(特に粒径2.5ミクロン以下の微小浮遊粒子)、肺癌の既往歴や家族歴、年齢なども肺癌リスクを高めると報告されています。

(Cancer epidemiology and Prevention 3rd ed. Pp638-658 Oxford University Press 2006)
(PloS One 2012;77(1):58-63)

肺癌発症のリスクファクターは?:最大のリスクファクターは喫煙

参考文献

日本肺癌学会編 EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 金原出版株式会社 2014東京
David M Mannino, MD. Cigarette smoking and other risk factors for lung cancers. Up To Date. last update 2014 July.

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患