びまん性汎細気管支炎の画像経過 (diffuse panbronchiolitis;DPB)

びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis;DPB)は、日常生活の生活水準向上や早期からのマクロライドの少量長期療法により、近年、典型例は稀です。

特に、慢性咳嗽を主訴とした場合、気軽にマクロライドを処方するため、いつの間にか治癒していることも多く、若手医師は典型的な画像に触れることは少ないのではないでしょうか。

今回は、当院で経験をした、びまん性汎細気管支炎の典型例をお示しします。

50歳代男性。慢性の湿性咳嗽と副鼻腔炎で来院。
びまん性汎細気管支炎の画像経過
(初診時胸部CT:中葉・舌区に気管支壁肥厚、小葉中心性の粒状影を認める。)

初診時のCTは、小葉中心性の粒状影がありましたが、当初はウイルス性細気管支炎と考え、マクロライドを使用せずに、鎮咳薬を用いた対症療法をしました。

しかし、数か月経っても改善しなかったため、胸部CTを追加撮影したところ、小葉中心性の小粒状影とそれにつながる線状影、および、気管支壁の肥厚が明らかに進行し、びまん性汎細気管支炎を疑いました。


びまん性汎細気管支炎の画像経過

(マクロライド少量療法前の胸部CT:数か月で上記の陰影が瀰漫性に広がっている。)

呼吸機能検査および血液ガス検査で1秒率の低下(55%)、低酸素血症を認め、血液検査で寒冷凝集素も高値でした。下記の診断基準を全て満たしていました。


びまん性汎細気管支炎の画像経過

マクロライド少量長期療法を開始し、すぐに症状は消失。CT所見も改善しました。一般的に症粒状影の消失は得られるものの、気管支拡張所見は残存することもありますが、本症例では気管支拡張所見は認められませんでした。

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(マクロライド少量療法6ヶ月後の胸部CT:陰影はほぼ消失している。)

びまん性に広がる小葉中心性の分岐状構造をもつ線状影をみたら、びまん性汎細気管支炎も疑いましょう。その際には鼻症状を忘れずに尋ねることが大切です。

1) 中田紘一郎:DPBの診断指針改訂と重症度分類策定、厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班平成10 年度研究報告書。1999, 109―111.

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患