ニューモシスチス肺炎の補助診断におけるβ-D-glucanの有用性

ニューモシスチス肺炎の補助診断法としてβ-D-glucanは有効です。

特に、最近増加傾向にある非HIV患者のニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia: PCP)においては、喀痰の染色法の感度が低いため、喀痰の遺伝子学的検査(PCRやLAMP)や、血清のβ-D-glucanが診断に用いられます。

非HIV-PCP診断における院内LAMP法の有効性については2014年に当科より報告しました。
(Kei Nakashima, Masahiro Aoshima et al.
J Infect Chemother. 2014 Dec;20(12):757-61.)


β-D -glucanは現在少なくとも3種類の検査法があり、検査法により感度やカットオフ値が変わることに注意が必要です。


本稿では、本邦で最も汎用されているワコー法について述べます。

β-D-glucan(ワコー法)におけるカットオフ値については、PCPが疑われBALを施行した279例の検討で、カットオフ値 31.1pg/mL、感度92.3%、特異度86.1%が報告されております。
(Tasaka et al. Chest 2007; 121:1173-1180)

当院において非HIV患者に対して行った検討では、β-D-glucan(ワコー法)のカットオフ値 9.0pg/mL、感度84.6%、特異度79.1%と、従来の報告より低いカットオフ値でした。
(中島啓 青島正大ら. 非HIVニューモシスチス肺炎の診断における
 β-D-glucanのカットオフ値 第55回日本呼吸器学会学術講演会
 2015年東京: 現在論文化中)

当院の検討では、非HIV患者が対象であったため、診断感度が低い染色法だけでなく、遺伝子学的検査(PCRやLAMP)陽性も、微生物学的な診断基準に含んだため、従来の報告より低いカットオフ値になった可能性があります。

非HIVニューモシスチス肺炎の診断において遺伝子学的検査が頻用されるようなった現在は、β-D-glucanのカットオフ値にも見直しが必要なのかもしれません。

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患