第25回大腸肛門機能障害研究会に参加しました

9月の第1土曜日に毎年開催される大腸肛門機能障害研究会は1年で一番排便機能の分野で盛り上がる学術集会です。当院からも多くのスタッフが参加しました。以下亀田京橋クリニック臨床検査技師高橋明子からの報告です。


全国各地から多くの医療者が集まり様々な研究結果を発表し、活発な討論が繰り広げられるとても熱い研究会です。亀田グループからは角田 明良医師、大澤 郁子技師、岩谷 有希看護師の3名が日々の研究結果について発表しました。この研究会に検査技師として参加してきたので少し報告させて頂きます。

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「直腸瘤に対するtransanal anterior Delorme(TAD)術後の排便機能とQOL」 角田 明良医師

直腸瘤と診断され、排便障害(排便困難、便失禁に限定)が保存的治療で改善せずにTAD法の手術が適応になった患者さまを対象に、術後のQOLの改善を評価しました。
術後、直腸瘤は縮小したが肛門内圧・感覚検査では明らかな変化はありませんでした。しかし、日常生活での排便障害の程度を評価するCSS score(排便困難)とFISI score(便失禁)は術後、両者ともに改善がみられました。またQOL調査票の評価においても改善が認められました。よってTAD法はQOLの改善に有用と考えられます。

「直腸肛門重責を有する便失禁患者の体位と肛門内圧の関係」 大澤 郁子技師

通常、便失禁は臥位よりも立位で生じやすく、肛門内圧検査でのMRP(安静時の肛門管の圧)は臥位より立位の方が高値に出ます。今回の研究では、便失禁の原因の一つとなる直腸重積のみを持つPt.と、直腸重積+直腸瘤を持つPt.のMRPの結果を比較しました。結果は、直腸重積を持つPt.はMRP値が臥位より立位で有意に低値になり、直腸重積+直腸瘤を持つPt.は体位による有意な値の差は認められませんでした。

「径肛門的洗腸療法導入時における患者指導の検討」 岩谷有希 ストーマ皮膚排泄認定看護師

難治性の便失禁や便秘症の患者様の症状改善やQOL改善に有効な径肛門的洗腸療法の有用な指導方法を検討しました。1〜2日入院していただいて指導することで患者さまの理解力や身体機能、生活環境を調整した方法で指導することが出来るので、より安全な手技習得につながりました。その結果、患者さまの症状改善やQOL向上につながると考えられました。


この学会では、亀田グループの発表以外にも全国各地から集まった医療従事者の話を聴くことができました。私たちは今回培った知識を少しでも検査を通して患者さまに還元できるようにこれからも頑張っていこうと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
消化器外科部長 高橋 知子

【専門分野】
肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害