IAD: Incontinence-Associated Dermatitis をご存知でしょうか?

IAD: Incontinence-Associated Dermatitisとは、「便や尿の接触により会陰部や生殖器周辺に発生する皮膚の炎症」と定義されています。高齢化が進む日本において、介護現場でしばしば見られるこの皮膚炎は患者様の生活の質QOLを下げるだけでなく、治療にかかるコストなど経済的影響も大きいとされています。先日の抄読会にて佐藤理子皮膚排泄認定看護師がIADについてとりあげました。

取り上げられた論文は、「市川佳映, 須釜純子: 介護療養型医療施設におけるIncontinence-Associated Dermatitis (IAD)の有病率および看護ケア、組織体制との関連. 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 19: 319-326, 2015」です。
43施設の介護療養型医療施設においてIADの有病率とIADに影響を与える看護ケアは何かについてアンケート郵送で調査した研究です。結果ではIADの有病率は5.9%と諸外国と比較して高くはなく、「微温湯と洗浄剤(石鹸など)による陰部の洗浄」がIAD発生を下げる因子であることが判明した。通常、陰部の洗浄では皮膚をアルカリ性にする石鹸ではなく、保湿効果の高い洗浄剤の使用が推奨されているが現場ではコスト面でもあり石鹸が使用されることが多い、しかしながら日本では高吸収のオムツの使用していることや洗浄によって拭く回数が減ることによって、石鹸を使用してもIAD発生を下げるのであろうと考察されていました。
IADは介護が必要な方だけでなく、失禁を有する人全てに関わる状態です。今後も科学的に分析されることにより発生頻度を下げるようになるでしょう。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
消化器外科部長 高橋 知子

【専門分野】
肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害