新年のご挨拶

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

昨年末に「日日是好日」という映画を見ました。樹木希林の遺作となった映画ですが、ご覧になった方も多いと思います。樹木希林演ずる茶道の先生に黒木華演ずる主人公が師事して、茶道を通して精神的に成長していく話です。この中で「世の中にはすぐに解るものと、すぐには解らないものの二種類がある。すぐには解らないものは時間をかけて解るようになる」というくだりがあります。主人公が、フェデリコ・フェリーニ監督作品の名作である「道」を、少女時代に見たときには意味が解らなかったのが、成人になって意味が解るようになるシーンがありますが、そのくだりの意味するところと重ねてみることができると思います。

日々の診療のなかでも、解りにくいことがよくあります。そして、そのことをずっと気にしていると、後年ヒントになることが出てきて、それをまた気にしていると、とうとう解ることがあります。私にとって「直腸重積」がそうでした。9年前は「直腸重積」という言葉は知っていましたが、はじめは「直腸粘膜脱」と同義だと思っていたのです。でも誤っていました。「直腸重積」は粘膜が脱出するのではなく、直腸壁全体が内側に折り重なることだったのです。それは排便造影ではどのように描出されるのか、自分が「直腸重積」と思う排便造影の写真と英文論文のFigureを比べました。次第に典型的な写真は解るようになりましたが、非定型的な写真が多いのです。そこでとうとう「直腸重積」を作ることにしました。アメゴムをネットで購入して、重積をこしらえてみましたが、うまくいきません。仕方なく半年前に業者に作成を依頼しました。やっとそれが先月に手に入ったのです。これを用いて、排便造影をするのが年初の楽しみです。

ずっと気にしていると、いいことがあります。気になることについて、時間をかけてゆっくりと楽しんでみてはいかがですか。

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消化器外科 部長
角田 明良

このサイトの監修者

亀田総合病院
消化器外科部長 高橋 知子

【専門分野】
肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害