第23回大腸肛門機能障害研究会参加報告

日本国内で便秘や便失禁を多く扱う研究会として大腸肛門機能障害研究会があります。今年は亀田メディカルセンターより5題の演題を出しました。初の参加となった今年の研究会について亀田クリニックで肛門内圧検査とウロダイナミクス検査を担当している大澤郁子 臨床検査技師からの報告です。


9月2日に東京で開催された第23回大腸肛門機能障害研究会に参加しました。大腸肛門機能障害研究会は医師だけでなく、看護師、臨床工学士、臨床検査技師、診療放射線技師などコメディカルの演題発表も年々増加し、共感出来る演題や知識として身につく演題も多くありました。

臨床工学士は今話題のSNM(仙骨神経刺激療法)の関わり、臨床検査技師は肛門内圧検査、診療放射線技師は排便造影、理学療法士はバイオフィードバックなどを主に発表いていました。

SNMは2014年から便失禁に対して公的医療保険に適用されたため(現在は過活動膀胱、切迫性尿失禁にも適応拡大)、関心は強く、臨床工学士の関わりはリード植込み補助や外来管理など多岐に渡っていました。

肛門内圧検査は異常波形と便失禁症状の関連性についての発表がありました。Ultra Slow Wavesや直腸収縮波形などの異常波形はアーチファクトと見ていたため、この発表を聞き、知見を広げることが出来ました。

排便造影は擬似便の量と排出度の検討や足台を用いた検査姿勢の検討など検査手順の新しい試みが発表されていました。

バイオフィードバック(骨盤底筋収縮訓練のための)は便失禁の患者に対して行うリハビリですが、訓練方法と効果は様々な報告がされていました。

超音波検査を用いた評価法では、分娩前後の内外括約筋を3-D経肛門エコーで比較した発表がありました。分娩後のエコーにて恥骨直腸筋の断裂や恥骨付着部離脱など認められ、分娩前の3-D経肛門エコーはルーチン業務として取り入れても良いと思いました。

栄養士の発表は、軟便に関係する食物繊維の摂取量に着目した内容でした。便失禁患者は米の摂取量が少なく、果実の摂取量が多い結果となり、栄養指導により非常に効果的な結果な内容でした。

普段は見られない疾患の説明や治療戦略の講演は大変勉強になりました。 どの病院もチーム体制で患者をケア・サポートし、効果を分析検討していました。 今後私も将来の大腸肛門機能の解明への取り組みに貢献できるよう努力していきたいと思います。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
消化器外科部長 高橋 知子

【専門分野】
肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害