排便造影検査をご存知ですか?

「上手く便をだせない」排便困難、「無意識に便が下着に付着する」便失禁の原因を探るため、または肛門や膣からの脱出する物が何かを調べる検査として排便造影検査があります。亀田総合病院で排便造影検査を担当している田島太一放射線技師が技師目線で排便造影検査においての当院での撮影の工夫を紹介してくれました。現在、この検査を実施または予定をしている施設の技師さん必見の内容です!以下田島からの報告です。

当院では2009年より排便困難や便失禁、直腸脱等の検査のために、X線透視装置を使用した排便造影検査を始めました。検査件数は2016年度においては1年間で約160件施行しています。検査件数の増加に伴い、X線透視装置に組み込める排便造影専門の検査台を作成し、検査を効率よく行えるようにしました。

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上図はX線透視装置に排便検査台を装着させた様子。
寝台を寝かせた状態でバリウムを挿入し、そのまま寝台を起こして排便が出来る様にしている。

当初、排便検査時は透視動画をDVDに録画する手法をとっていましたが、現在では排便に合わせ1秒間に2コマの連続撮影をしています。

当院の排便造影は、診断能を上げるため、一枚の画像にX線吸収の高い骨盤の骨と、X線吸収の低い臀部の皮膚面や、脱出した直腸等の軟部組織を同一写真上に写し出していることが特徴の一つです。
その為に、東芝メディカルのフラットパネル(FPD)X線透視装置を使用し、画像の高輝度部と低輝度部の明るさを自動補正するデジタル補償フィルタ機能(DCF)という特殊な機能を最大限に活用することと、臀部の皮膚面に鉛フィルタを貼ることにより、寛容度(見える幅)の広い写真を提供できるよう工夫しています。

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上図左では、骨盤の骨と、骨盤内直腸及び小腸に合わせ、臀部皮膚面と肛門部が写し出されている。
上図右では、臀部皮膚面から造影された直腸が出ている。直腸脱と診断された一例。

1秒間2コマの連続写真が電子カルテで間便に見られるメリットがある一方で、この撮影法の欠点として、X線による被ばく線量の増加が問題になります。
当院のデータで照射線量は、胃のバリウム検査の約2倍のX線が照射されています。
排便造影は若い女性を検査することもありますので、その場合は連続撮影をせずに、透視を録画する方法で被ばく線量を少なくした検査を施行しています。

私たち放射線技師は、医師やコメディカルが加わった直腸肛門機能チームに参加し、定期的にカンファレンスを行い、いろいろな患者様に配慮し、質の高い検査をすることを心がけています。


このサイトの監修者

亀田総合病院
消化器外科部長 高橋 知子

【専門分野】
肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害