【活動報告】フェニックスAAPHM通信 from 鴨川 その13(最終回)

今回AAHPM/HPNAに参加して、自らの発表を通じてスキルアップになったと同時に、ホスピス緩和ケアにまつわる学習環境の一つとしての学会の在り方についても大いに勉強になりました。気付いたこと、思ったことを箇条書きで記したいと思います。

また、学会全体の評価アンケート(これを提出しないと単位がもらえない)の中に、「本学会参加の達成目標」という項目があり、これがそのままホスピス・緩和ケア医としての到達目標(あるいは、研修目標)となるように思われましたので、そちらも併せて記します。

2月末から足かけ2週間にわたりおつきあい頂きましてありがとうございました。

【学会雑感】

<朝が早い!>
毎朝7時からセッションが開始され(実はその前にmindfulness meditationセッションもある)、その前後にはロビーにビュッフェスタイルの朝食が用意されていました。専門医の参加費は$900以上ですので、その辺は参加費に含まれていると考えても差し支えなさそうです(ランチョンセミナーはありませんが...)。
参考:時間割
 1時間目:7:00-8:00
 本会議(表彰式+招待講演) 8:15-10:00
 2時間目 10:30-11:00
 3時間目 13:30-14:30
 4時間目 15:00-16:00
 5時間目 16:30-17:30
 
<セッション>
基本は1時間で、1グループによる発表・問題提起が40-45分程度プレゼンされた後、質疑応答が行われました。研究発表というよりは総説的な内容が多く、症例から考え調べてみたことの発表、今困っていることの解決法、最新の研究結果まとめ、提言、などが目につきました。発表者によるtake-home messageは明確であり、それに対して参加者(聴衆というより、参加者)がプレゼンの途中でも質問を繰り出すなど、活発な議論があちこちで見られました。ワークショップや寸劇が組み込まれている場合もありましたが、日本の学会でよく見られるパネルディスカッションはほとんどありませんでした。Plenary Session以外のセッションは全て公募で、有名な先生も緩和ケア医一年生も等しく発表の機会が与えられていました。
 
<研究発表>
Scientific/caseに分かれており、15-20分の持ち時間で発表→質疑応答が1セットで、1時間の枠の中で3-4件の発表が組まれていました。論文化が前提でかなり込み入った突っ込みが入り、自分が発表者であったらいたたまれないだろうな、と思う場面もいくつかありましたが、発表者はみな丁々発止のやりとりをしていました。
 
<ポスター発表>
こちらもscientific/caseに分けられて各75報、合わせて150報のポスター掲示でした。掲示場はレセプション会場および企業ブースと一体化しており、様々なイベントが行われるついでにポスターを見ていく人が多かったです。発表は初日の2時間のみで、その間は自分のポスターの前に立ち続けてランダムに繰り出される質問を受け続けます。それが終わると掲示のみで、最終日にポスターを剥がしておしまいとなります。各ポスターには発表者の連絡先を記しておくので、初日の質問タイムに間に合わなかった参加者は後日メールやツイッターで質問ができるようになっています。優秀なポスターは表彰されますが、それ以外にも論文化が望ましいポスターには医学雑誌のエディターの名刺(get in touchなどと書いてある)が挟まれていたりしました。

【学会評価における「参加の達成目標」(抄訳)】

この学会に参加したことで...

◆Translate advances in clinical and scientific knowledge of advanced disease processes, symptoms, and symptom management into improved patient care.(進行性の疾患、症状、症状コントロールに関する臨床的・科学的知識の進歩を自らの患者ケア向上につなげることができる)
 
◆Assess patient pain and other symptoms and side effects, and recommend a care plan based upon the best available evidence.(患者の疼痛およびその他の症状、および副作用を評価し、入手可能な最高のエビデンスを用いてケアプランを推奨できる)
 
◆Identify psychological, spiritual, social, and cultural aspects of patient care, and integrate support of those aspects of patient care into an overall plan of care.(患者ケアの心理的・スピリチュアル・社会的・文化的側面を明らかにし、それらを包括的患者ケアに統合することができる)
 
◆Apply sound communication principles with patients, families, and interdisciplinary teams.(患者・家族・多職種チームの間で健全なコミュニケーションを行うことができる)
 
◆Develop patient plans of care that incorporate interdisciplinary assessments and symptom management across all domains of care that are ultimately based on the expressed values, goals, and needs of the patient and family.(患者・家族のニーズ・価値観・ゴールを踏まえ、多職種によるアセスメントと症状緩和を全ての側面に応用したケアプランを作成できる)
 
◆Identify ethical, regulatory, and legal concerns related to hospice and palliative care.(ホスピス緩和ケアに関する倫理的・規制的・法的問題点を明らかにできる)
 
◆Discuss effective strategies and challenges for the delivery of hospice and palliative care in diverse settings.(様々な環境においてホスピス緩和ケアを提供するための効率的な戦略を議論できる)
 
◆Identify new contacts for future collaboration.(今後コラボレーションする仲間を見つけられる)
 
◆Facilitate future research in hospice and palliative care.(今後のホスピス緩和ケア分野での研究を推進できる)
 
◆Identify opportunities for enhanced self-care and resilience.(セルフケアとレジリエンスを可能にする機会をみつけられる)
 
◆Apply effective strategies using hospice and palliative care competencies in teaching and learning situations.(教育の場においてホスピス・緩和ケアの能力を生かした戦略を適用できる)
 
◆Identify opportunities and strategies for effective leadership within the field of hospice and palliative care.(ホスピス緩和ケアの分野で効率的なリーダーシップを確立するための機会と戦略を明らかにできる)
 
◆Identify opportunities to influence, initiate, maintain, and advance the practice and sustainability of palliative care within the changing healthcare environment. (変わりゆく医療の現場において永続的に緩和ケアの臨床を続けていけるように状況を切り開き、維持し、前に進めることができる) 

(江川:誤訳あればご指摘下さい)

このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和