緩和ケア教育
緩和ケア医を志す方へ
「初心を忘れず、緩和ケア新時代をぜひ一緒に作りましょう!」
皆さんはなぜ緩和ケア医を目指しているのでしょうか?どうして医師になったのでしょうか?その動機や初心を医師としての生涯にわたり大切に保ち続けてほしいと思います。
本来、医師(医療者)は人びとの病死、そしてそれによる痛みと苦しみに向き合う仕事ですが、特に、緩和ケアでは、人々の痛みや苦しみへの理解とそれにどう対応するかに焦点が当てられます。
緩和ケア医に求められる資質は、おおまかに2つの要素があると私は考えます。知識やハウツー式に身に付けられるスキルの側面と、臨床医として患者さんや家族へ対面する際に、どのようにふるまうかという態度(プロフェッショナリズム)の側面です。
前者の薬剤処方等による苦痛症状コントロールのスキルに関しては、近年、エビデンスやガイドラインが蓄積され、誰でも一定期間に一定数の症例を現場でこなせば、このスキルを身につけることができます。過去に当科で研修された先生方のコメント(修了生の声)にもあるように、症例豊富な当科の専門研修を受ければ、このスキルを身に付けることは全く問題ないはずです。
一方、後者の態度の側面は、前者よりも簡単ではありません。なぜなら、その医療者(医師)がそもそもどういった人間であり、なぜ医師や緩和ケア医を志したのか(初心)が大きく関係するからです。皆さんが医師や緩和ケア医となる年齢は、20代後半から場合によっては30代かもしれませんが、それまでの人生で、どのようなコミュニケーションをとってきたかが、意識的、あるいは無意識的に、患者さんや家族、あるいは医療者間の一つひとつのコミュニケーションの中に表現されます。
薬剤は重要な苦痛緩和の手段です。しかしながら、ある薬剤をどのように説明して処方するかを含め、基本的かつ重要なケア手段は、コミュニケーションそのもののなかにあります。患者や家族の前での自分の振る舞い(態度)やコミュニケーションの仕方に関しては、近年、コミュニケーション研修会などが開発されて、これをスキルとして学べるようにする試みも行われてはいます。ただし、こういった研修会は一定の効果はあると思いますが、ベースの部分のコミュニケーションスタイルは、皆さんが緩和ケア医になろうとした時点では既に決まったスタイルが出来ており、その部分に後から修正を加えることには、よほど意識的な働きが必要になってきます。
歴史上の先哲も繰り返し説いているように、「己を知ること」が人として最も重要かつ難しい作業であり、良き緩和ケア医になるにはこの部分がとても大切で欠かすことができません。緩和ケア医を志す人には、「己を知ること」そして、どうして緩和ケア医になろうと思ったのかという「初心」をいつも忘れないで、謙虚に自分自身と向き合うことの大切さを強調したいと思います。
当科の緩和ケアチームには、患者さんや家族の痛みや苦痛の緩和のために、ケアの質を高めたいという、高いモティベーションをもったスタッフが揃っています。このチームの中で日々、患者(家族)ケアに主体的に関わることで、意識的、無意識的に自分自身について振り返る機会が得られ、自分自身のコミュニケーションスタイルや、態度面に関する気づきが得られるはずです。
2008年に開始した当科フェローシップ(後期研修)修了者の先生方のコメントもぜひご参考にしていただき、高い志をもった方にはぜひ、当科の緩和ケア研修プログラムに応募してください。これから緩和ケア新時代をぜひ一緒に作ってゆこうではありませんか?
○亀田の緩和でできること
当院は日本緩和医療学会の認定研修施設ですので、2年間の専門研修後に所定の受験条件を満たせば、専門医試験の受験資格が得られます。
申請条件について詳しくはこちら https://www.jspm.ne.jp/nintei/senmoni_shinsei.html
当科の研修プログラムの特徴
- 米国で有数の疼痛・緩和ケア専門研修を受けた指導医からマンツーマン指導が受けられる
- 他診療科と良好な関係にあり、豊富なコンサルテーション症例が経験できる
- 外来では様々な慢性疼痛(難治性)への対処について学べる
- 多様な非がん疾患コンサルテーション症例を経験できる(入院は全依頼の約2割が非がん)
- 緩和ケアチームの多職種スタッフのスキルが高く、そこから多くを学べる
- 院内併設の在宅医療部があり、当科研修期間中に往診を定期的に行うこともできる
- 当院は日本初JCI認定施設であり、国際標準の医療環境の中で緩和ケアを実践できる
- 緩和ケア専門病棟は併設していないが、併診環境の中でも質の高い緩和ケアの提供が可能
- オピオイド回診など、病院オーディット(監査)活動に継続的に参加できる
- ACP(アドバンス・ケア・プランニング)啓発活動に参加できる
- 地域アウトリーチ(地域病院への緩和ケア症例検討会などへの参加)
- 米国の緩和ケア科でのobservership(フェロー2年次に2週〜4週程度:個別相談となります)
関連学会の一覧
- 日本緩和医療学会 https://www.jspm.ne.jp/
- 日本緩和医療学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jspm/-char/ja/
- 日本ホスピス緩和ケア学会 http://www.hpcj.org/
- 日本死の臨床研究会 http://www.jard.info/
- 日本サイコオンコロジー学会 http://www.jpos-society.org/
- 日本ペインクリニック学会 http://www.jspc.gr.jp/
- 日本臨床腫瘍学会 http://www.jsmo.or.jp/
- 日本在宅医学会 http://www.zaitakuigakkai.org/
- 日本プライマリケア連合学会 http://www.primary-care.or.jp/
- American Academy of Hospice and Palliative Medicine http://aahpm.org/
- European Association for Palliative Care http://www.eapcnet.eu/
- International Association for the Study of Pain http://www.iasp-pain.org/
- Asia Pacific Hospice Palliative Care Network http://aphn.org/