【活動報告】フェニックスAAPHM通信 from 鴨川 その9

Concurrent Session
FR470 Words Matter: Improving the Palliative Care Message
 
緩和ケアをめぐる「言葉の使い方」についてのセッションでした。実際のケアにおける言葉の使い方というより、緩和ケアをどのように推進するか、そのマーケティング・広報戦略に関する内容でした。ほぼハンドアウト通りに進んだので、重要な部分を抄訳します。

【社会運動を成功させる3つの秘訣】

 民衆が情熱と動機を持って参加している
 一貫性・信頼性・明確性のある言葉が使われている
 説得力がある

【「緩和ケア」と「ホスピス」の定義】

  • 「緩和ケア」の定義に「ホスピス」を使うのはいかがなものか?
    • 「ホスピス」:死への過程と死を思わせる言葉
    • 「緩和ケア」は必ずしもそのイメージと一致しない
  • 「緩和ケア」は死に至る病だけではなく重篤な疾患全般を対象
  • 「緩和ケア」は全ての年齢、全ての病期の重篤な疾患が対象
  • 「緩和ケア」は侵襲的治療と併用できる

【エビデンスに基づく定義】

  • 緩和ケアは重篤な疾患をもつ全ての人を対象とする専門的医療
    • その目的:重篤な疾患による症状・疼痛・ストレスの緩和
    • その目標:患者および家族のQOL向上
  • 緩和ケアは医師・看護師および他の専門家によるチームにより主治医の提供する医療に追加される医療である
  • 緩和ケアは全ての年齢、全ての病期の重篤な疾患が対象で、侵襲的治療と併用できる

【医師へのメッセージ】

  • 緩和ケアはどのように主治医をサポートするか
    • 家族ミーティングや・患者・家族へのカウンセリングを通じて
    • ケア目標に関する患者・家族と主治医間の齟齬の解決を通じて
    • 疼痛および他の症状の緩和を通じて

【「混乱を招く言葉」を使わない!】

  • 混乱している例:新聞記事より(こう書いてほしくなかった例)
    • 「ホスピスと緩和ケアは症状緩和に焦点を当てるが、緩和ケアはエンドオブライフケアをも視点に入れる。ホスピスは終末期の専門的ケアであり、予後6ヶ月以下の患者が対象である」
    • 「緩和ケアは命に関わる疾患を対象とする。ホスピスケアはその下位概念であるが、亡くなりつつある患者を対象とする。」

【その他の混乱しがちな言葉】

  • 主治医/ジェネラリスト/スペシャリスト/進行した/重篤な/サポーティブな
  • これらの言葉は、実情を伝えるのにあまり有用ではない!

【「進行した病気」】

  • 医師は「終末期の、治癒不能な、死の近づいた」という意味で「進行した」と言う
  • 医師でない人は「進行した」と言われてもピンと来ない
  • 「死について」よりも「QOLについて」語るべきである

【「アドバンス・ケア・プランニング」】

  • ACPは医師以外にとってはわかりにくいし馴染みがない言葉→定義:「予め計画を立てる」「保険を用意する」「家族を参加させる」
  • 患者が自分で思いつくことではない
  • 特に65歳以下だと自覚や知識に乏しい
  • 患者の2/3がACPを行っていない→理由:面倒くさい、そういう話題は避けたい、若くて健康である、言わなくてもわかっているだろうという思い込み、自分には関係ないという思い込み

このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和