【活動報告】フェニックスAAHPM通信 fromヒューストン その7

Plenary Session
103 Redesigning the End-of-Life Experience
Paul Bennett, BJ Miller, MD, Shoshana Berger

https://www.facebook.com/events/1178967782178569/

デザインコンサルタント会社IDEOのCCO(Chief Contents Officer) Paul Bennett氏とサンフランシスコのZen Hospice Project責任者BJ Miller医師による、「死をデザインしなおす」をテーマにした対談形式のセッションでした(ハンドアウトがなく全部は追いかけられなかったので気になったところだけメモ書き程度に記します)

Paul Bennett
https://www.ideo.com/eu/people/paul-bennett
http://www.designboom.com/design/interview-ideo-paul-bennett-end-of-life-design-challenge-06-07-2016/

BJ Miller
http://www.ted.com/speakers/bj_miller
https://www.zenhospice.org/

<IDEOのデザイン理念>
 human-centered design(訳語:人間中心設計)

<「死」をデザインしなおす、に対する普通の反応>
 「冗談言うな」
 「小細工したってムダ」
 「そんなことできっこない」

<緩和ケアとデザインの共通点>
 緩和ケア:人の話をよく聞いて、共感する
 デザイン:人の話をよく聞いて、共感する
 似てますね

<Design Thinking(デザイン思考)とは>
変化を起こすための思考法および技術のこと
cf. http://www.buildinsider.net/enterprise/designthinking/02

<何でもデザインできる>
 ペルー政府からの依頼:中流階級の生活向上
  例:その一環としての学校再デザイン
 コンゴ政府:医療システム全般
  病院を建て直すのではなく、システムの設計から

<ある病院からの依頼>
 患者が何を感じているか調べたい、という依頼
 前任の会社は、数百ページの報告書を作成
 病院経営者は報告書をどう使っていいかわからない
 IDEOに依頼→7分半、病院の天井を写した映像を提出
  患者の気持ちがよくわかる
  中心にいる人(この場合は患者)を忘れない
 それから職員全員にヒアリング、アイデアを募ったら
  ストレッチャーにバックミラーを
   ・搬送担当と患者が会話できるように
  カルテに患者の写真をつける
   ・エラーが減る
  部屋と廊下の床を分ける
   ・外と中を区別、家に帰ってきた気分に
  部屋の壁をホワイトボードにする
   ・お見舞い客がメッセージを残せる

<Design Thinkingは>
 人間をインスピレーションの源ととらえる
 共に創造する
 たたき台を作って直す、を繰り返す
 様々なレベルのインパクト:個人的・経済的・社会的・政治的・・・

<Zen hospice project>
 Dying happens. To all of us.「人はみな、いつか死ぬ」
 だから、誰でも議論や会話に参加してよい
  意見の例:マシュマロの食感やクッキーの匂いが生の実感を与える

<デザインとは>
 「もの」だけでなく「こと」もデザインできる
 「こと」のデザインの延長線上に「もの」のデザインがくることも

<メディアでの特集>
California Sunday Magazine "Can death really be re-designed?
https://stories.californiasunday.com/2015-04-05/death-redesigned

<全ての死に物語がある>
例:中国式の葬式は賑やか、西洋の葬式は暗い
 →死の扱い方が文化によって違う

<Open IDEO>
※オープンクエスチョンで意見を募るプラットフォーム
"How might we reimagine the end-of-life experience?"
https://challenges.openideo.com/challenge/end-of-life/brief
 システムとは何か誰も明確に定義できない
 →システムをどうやってデザインしなおすかみんなで考える
 How to die: A field book(死に方手帳)を出版予定

<質問コーナー>

Q: 医療の計量化・平準化とhuman-centered designのバランスをどうとるか?

Dr. Miller: RCTの限界が指摘されるなど、研究のスタンダードが変わってきており、医療のプロセスをredsignする必要がある。
Mr. Bennett: プロジェクトに反対しそうな人をまず見つけて、最初から巻き込んでおく(「みんなで考えよう」の実践)と、プロセスに厚みが出る。KPIの定義をkey performance indicators(重要業績評価指標)からkeep people involved(みんなを巻き込め)に変えよう

Q: 「希望」はどうデザインしなおせるだろう?

Dr. Miller: 何を望むか、問い続けることかな。
Mr. Bennett: 「希望」を捨てたい人はいないと思う。希望と奇跡の違いを考えよう。これからのことに対して抱く感情として、「恐れ」より「希望」を増やしていきたい。

Q: 家族環境や年齢、人口動態などを考慮すると、個々人で文化が違うと思うが、様々なコミュニティについてどのようにデザインしなおしていくのか?

Dr. Miler: まずはよく話を聞くこと
Mr. Bennett: 大きな目的、特効薬、単一のデザイン、固定したシステムを求めず、 小さな思考や概念をいくつもいくつも集め、多様性を尊重し、それらを共有する

Q: 死をデザインしなおすとき、最初にくるのは何だろう?

Dr. Miller: 死についてまずどう「感じたか」を忘れてはいけない。あなたの物語が始まる場所から始めていく
Mr. Bennett: 死を現実のものとして受け入れることから会話が始まるだろう。"Everyone Poops"(五味太郎『みんなうんち』)という絵本があるが、"Everyone Dies"(『みんな死ぬ』)という絵本がないのは不思議なことだ。文化の中で人々が当たり前だと思っている死についての考え方を結んだり開いたりすることが必要と思う。

<実際の活動紹介>
Re: Imagine | End of Life
2016年10月24日〜30日 
サンフランシスコで開かれた35のイベント
https://www.facebook.com/events/1178967782178569/

(江川)

このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和