【活動報告】フェニックスAAHPM通信 その4

朝のセッションは7時から開始。早いです。
Concurrent Session
TH304 The Dreaded Dialysis Discussion: What the Evidence Shows and How to Effectively Facilitate the Conversation
透析の見合わせや離脱に関するセッションでした。

【セッションまとめ】

  • 特筆すべき合併症がある高齢透析患者の死亡率は高く、保存的治療と生存率の差はあまりない
  • 透析開始した患者では入院期間が長くなり、病院で死亡する傾向が高い
  • 老人ホーム入居者では透析開始後の全身状態は著しく低下し、改善しない
  • 透析開始を見合わせた方が全身状態が保たれる可能性がある
  • ACP(Advance Care Planning)はあまり行われておらず、Shared Decision Making Guidelineを遵守するためには腎臓内科研修の質の改善が必要である
  • 緩和ケアと腎臓内科のコラボレーションは今後有望で、患者のQOLを改善する可能性がある

【気になる数字】

老人ホーム入居者3702名について
-Kurella Tamura M et al. N Engl J Med 2009;361:1539-1547
58%:透析開始1年後の死亡率
13%:透析開始1年後に全身状態が安定していた割合
29%:透析開始1年後に全身状態が悪化していた割合
12→16:透析開始3ヵ月後のADLスコア(改善)

透析を見合わせた75名のコホート研究
-Murtagh et al. JAGS 2011
66%:観察中に死亡
1年間:死亡前に全身状態が安定していた期間

透析患者のgoals of care
-HolleyJL, et al. Am J Kidney Dis 2003 / Arnold, R. NEJM 2009
30%:75歳以上の透析患者が透析離脱する割合
22%:腎臓内科研修医のうち緩和ケア研修を受けた割合
32%:腎臓内科研修中にfamily meetingを2回以上行った割合

カナダでは
-Davison SN. ASN 2010
61%:透析を始めたことを後悔している
83%:緩和ケアを受けられると知らなかった
90%:腎臓内科医とend-of-life careの話をしなかった

オーストラリアでは
-Brown et al. CJASN 2015
32%:75歳以上で透析導入せずeGFR<10で1年以上生きた人の割合
腎臓内科研修医は
95%:緩和ケアの必要性を感じている
5名:実際に緩和ケアをローテート研修した
46%:Shared Decision Making Guidelineを知らない

【Shared Decision Making Guidelinesのまとめ】

-Clinical Practice Guideline on Shared Decision-Making in the Appropriate Initiation of and Withdrawal from Dialysis, Updated 2010
・Shared Decision Making
  患者は必ず参加する
・説明に基づく同意または拒否
  Time limited trialを含む全ての選択肢を提示する
  全ての選択肢のもたらす結果を患者が理解する
・予後予測
  予後とQOLについて伝える
・対立点の解決
  医師と患者で意見が一致しない場合にどうするか
・事前指示書
  全ての透析患者で取得する
・透析の見合わせと離脱
  倫理的には同値
・特殊な場合
  腎臓疾患以外で末期の場合、透析見合わせは合理的
・Time limited trials
  見通しが立たないときには有効
・緩和ケア
  透析中を含む全ての期間で提供されうる
・全身的にアプローチする

このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和