【活動報告】2019/2/7〜8 萩原裕也先生(現、アイオワ大学緩和医療フェローショップ プログラムディレクター 来鴨!

2/7から1泊2日でアイオワ大学から萩原先生が当科へ見学にお越しくださいました。帰国子女でバイリンガルの萩原先生は、日本の医学部(山梨大学医学部)を卒業後すぐ渡米。現在は老年科と緩和医療科の専門医としてアイオワ大学の緩和医療科でフェローシップのディレクターをされています。先生の前の職場時代(テキサス大学San Antonio校)にDr. Sandra Moodyと、American Geriatrics Society(AGS)のmentoring programでマッチ!?されたそうで、互いにmentor/menteeの関係だったのだとか。久しぶりの再会を鴨川の地で果たされた萩原先生とムーディー先生。しばらく会話が止まらないようでした。

アイオワ大学には数十名の日本人臨床医がおり、おそらく米国で最も日本人臨床医が多く働く病院なのだとか。800床の入院ベッドを横断的にカバーする緩和ケアチームは3つあり、日々多忙に過ごされているようです。最も相談が多い(半数以上)のは、集中治療室からの依頼で、様々な大がかりの延命装置からの離脱が医学的見地から適切とされる場面で、主治医チームは積極的治療からの離脱をスムーズに行うためのfamily meetingを緩和ケアチームに依頼するパターンが通例。集中治療室における様々な大がかりな延命装置から撤退した後の終末期に、穏やかに過ごせるよう患者さんと家族をサポートするという大きな任務を病院から任されているとのことでした。依頼内容が鎮痛薬調整に関する場合は、オピオイド薬理に大変詳しい突出したスキルと知識を持った薬剤師がチームにおられるため、緩和医療科の医師がアドバイスするよりその薬剤師にその依頼を任せる場面が多いのだそうです。

萩原先生には、午前中のDr. Moody's session、その後のチーム回診、がんサポート外来にも付き合っていただき、有意義な意見交換ができました。回診中病棟患者さんに、内服レスキュードーズ自己管理の指示を出している際には、先生から"オピオイドの錠剤をたとえ1錠であっても入院中にベッドサイドで自己管理させるなんて米国ではありえませんね〜、何せオピオイドクライシスですから"、とのコメントがあり、私達一同、え〜?そ、そうなんですね〜。入院中、内服レスキュー自己管理はダメなら、突出痛で困っていたら米国では皆、PCA(オピオイド注射の自己調節鎮痛・薬液カセットは鍵付き)で管理することになるのでしょうか・・・それとも、日本より米国は患者1人当り看護師の数が圧倒的に多いので、患者さんが内服レスキューが欲しいといったら、日本の病院よりもかなり迅速に患者さんにレスキューが届けられるのでしょうか??

米国のオピオイドクライシスの影響で、米国では、これまでは強オピオイドも頻繁に処方していた内科医や家庭医たちが、今後は、強オピオイドは一切処方しない、と固く方針を決めているところが多いのだそうです。

他には医療用大麻に関する話。医療用大麻合法化の波が現在米国に広がる中、アイオワ州でも、患者が自分で医療用大麻を入手し使用しているケースが激増しているのだそうです。医療用大麻の扱いをどうするか、各施設で試行錯誤の取り組みが始まっているとのことです。萩原先生、このたびは、遠路お越しくださり、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします!次回はぜひ米国でお会いしましょう!

(関根)

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和