腎機能障害と続発性副甲状腺機能亢進症

投稿日:2023年9月25日

副甲状腺ホルモン(PTH)は、血液中のカルシウムを調節する重要なホルモンです。

何らかの原因により副甲状腺が腫大して、PTHが過剰に分泌されると血液中のカルシウム濃度がどんどん上がってしまいます。このように副甲状腺そのものに原因がある場合、特発性副甲状腺機能亢進症と呼んでいます。

副甲状腺以外の病気によって起こる低カルシウム血症のために、カルシウム濃度を上げようとして、二次的に副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることがあります。二次的に起こる副甲状腺機能亢進症を、「特発性」と区別して「続発性」副腎機能亢進症と呼んでいます。慢性腎不全、ビタミンD欠乏症、薬剤性などが知られています。

疾患の治療が適切に行われないと、持続的に副甲状腺が刺激を受け、増加した副甲状腺ホルモンにより、血液中のカルシウム濃度は改善されますが、その代償として骨密度の減少、筋肉や血管などへの異所性石灰化など困った問題を引き起こします。

原因として最も重要なものは慢性腎不全です。腎臓は血液中の老廃物を排出し、体内の水分や電解質バランスを調整する重要な役割を持っています。慢性腎不全では血液中のカルシウム濃度が低下し、リン濃度が上昇しますが、それを改善するためにPTHが過剰に分泌されるようになります。PTHが過剰に分泌されるため、骨のカルシウムが血液中に持続的に溶け出し、カルシウムは腎臓から体外に排泄されてしまいます。

ビタミンDは腎臓で活性化される必要があります。腎機能障害があるとビタミンDの活性化が障害され、そのため消化管からのカルシウム吸収が低下し、腎臓でのカルシウムの再吸収が障害されます。

慢性腎不全の患者さんでは、PTHの過剰分泌(続発性副甲状腺機能亢進症)とビタミンD活性化障害のために、重症の骨粗鬆症に陥ってしまいます。

重症の骨粗鬆症では、強力な骨粗鬆症薬を使用したいところですが、骨粗鬆症薬の中には腎機能をさらに悪化させるものもありますので、慎重に血液所見をモニターしながら慎重な治療が必要となります。専門の先生にご相談下さい。

亀田総合病院 脊髄脊椎外科 久保田基夫

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