太古の海の記憶

投稿日:2023年9月19日

‘Blood reflex the early seas. (1926 Macculum)’、「血液は太古の海を反映する」と訳したらよいのでしょうか。

地球が誕生してから46億年がたちます。最初の生命が誕生したのは約39億年前、化石などの形でその姿を見ることができるのは約35億年前、現代のシアノバクテリア(光合成をする細菌類)に似た細菌による、生命活動のあとを化石として確認することができます(大英博物館監修「世界を変えた100の化石」)。その後多細胞生物が誕生し、生物は環境に適応して多様化してきました。

地球が誕生したばかりの海水は、現在ほど多くのミネラルを含んでいませんでした。降り注ぐ雨に交じって陸地のミネラルが溶解し、川となって海に流れ込み、長い時間をかけて海水の電解質濃度は上昇してきたといわれています。

原始的な多細胞生物が誕生したとき、細胞外液にその時の海水の組成を閉じ込めました。生物が多様化し、陸上に進出しても、太古の海のミネラルの組成が、そのまま血液(≒細胞外液)に反映されているというわけです。血液に封じ込められた「太古の海の記憶」、すごくスケールの大きな物語ですね。だから今でも私たちは、PTHやカルシトニンの力を借りて、血中カルシウム濃度を太古の海と同じ濃度、10mg/dLを保つ必要があるのです。

亀田総合病院 脊髄脊椎外科 久保田基夫

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