第8話 危険因子と予防(バランスの良い食事)

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 高齢化社会のデータや骨粗鬆症に関する数字を眺めていると、ちょっと憂鬱(ゆううつ)な気分になりますね。今回は気分を変えて明るい話題にしましょう。
「骨粗鬆症の危険因子と予防」です。なになに、全然明るくないじゃないかって?そんなことはありません。「彼を知り、己をしれば、百戦あやうからず(孫子)」って言うじゃありませんか。
 「誰でも年をとるし、ダイイチ、性別は変えられないでしょ!」
   ― おっしゃることはよくわかります。
骨粗鬆症に負けないためにはどうしたらよいか、一緒に考えてゆきましょう。

 骨粗鬆症の危険因子には、「除去できない危険因子」と「改善可能な危険因子」があります。例えば、年齢や性別、脆弱性骨折の家族歴や過去の骨折歴、女性でいえば初潮や閉経の時期などの因子は変えることができません。しかし、カルシウムやビタミンD、ビタミンK不足、運動不足、無理なダイエット、飲酒や喫煙などは、自分の意志で改善することができます。
 自分でできる骨粗鬆症対策の秘訣は、「バランスの良い食事と適度な運動」です。このコラムでは食事についてお話ししましょう。骨粗鬆症というとカルシウムを取ればよいと考えがちですが、サプリメントを服用するだけでは骨粗鬆症の予防にはなりません。バランスの良い食事を心がけてください。
 閉経後の女性ではBMIが低い人(やせた人)のほうが、骨折リスクが高いことが知られています。年を取ってから体重が減るということは、とりもなおさず骨量や筋肉量の減少につながります。骨折のリスクが上がるばかりでなく、活動性や筋力が低下することにより転倒することも多くなります。でも、太っていればよいというものでもありません。生活習慣病のリスクが高くなり、糖尿病などでは骨質も悪化します。何事も中庸、適正なカロリーとたんぱく質の摂取を心がけてください。
 次にカルシウムです。日本人は乳製品の摂取量が少ないため、どうしてもカルシウム不足になりがちです。骨粗鬆症予防のためには、1日800〜1000mgのカルシウム摂取が推奨されています。牛乳1本(200ml)がおよそカルシウム200mgに当たります。牛乳以外の乳製品(ヨーグルト、チーズなど)もおすすめです。その他、魚介類(シシャモ、シラス、干しエビなど)、大豆製品(納豆、豆腐、生揚げなど)、野菜や海藻(小松菜、カブ、ひじき、わかめ、いりごまなど)にもカルシウムがたくさん含まれています。食品ごとにカルシウムの吸収効率が異なります。最も吸収効率が良いのは牛乳で40%、小魚は33%、野菜類は19%程度といわれています。
 カルシウムをとるうえで覚えていただきたいことですが、リンを多く含む食品(インスタント食品、練り物など)はできるだけ控えてください。リンはカルシウムの吸収を阻害するといわれています。

2022年6月20日

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