第5話 平均寿命と健康寿命

column2_5.jpg 政府は毎年さまざまな国民の健康に関する統計を報告しています。「国民衛生の動向」や「国民の福祉と介護に関する動向(いずれも厚生労働統計協会)」は、私たちの健康状態を知るうえで基礎となる情報であり、かくれた名著ではないかと思います。雑誌として購入することもできますが、厚生労働省のホームページで閲覧することが可能です。
 健康指標というとなんだか難しそうですが、「高齢者とは何歳以上か」、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」などの国民の意識調査や、年齢別にみるインターネット普及率やネットショッピング利用率など、見ていて飽きない、それでいていろいろと考えさせられるデータをたくさん見ることができます。
 「人口の長期推移」のグラフを見てみましょう。1990年には12.1%だった高齢化率(65歳以上の人口の割合)が、2019年には28.4%に増加していました。そして、2040年にはなんと35.3%になると推定されています。

 さて「平均寿命と健康寿命」の話です。日本人の平均寿命は男性80.9歳、女性87.1歳(平成28年)でした。3年ごとに調査が行われていますが、15年前(平成13年)と比較して男女とも2歳近く平均寿命が延びています。これに対し健康寿命は平成28年には男性72.1歳、女性74.7歳でした。健康寿命とは制限なく日常生活を送れる年齢を示しています。平均寿命から健康寿命を差し引いた差は、男性では8.8年、女性では12.4年になります。これは生活に支障がある、あるいは誰かの助けを借りて生活している期間と言うことになります。10年近く誰かの世話にならなくてはいけないとすると、平均寿命が延びたことを手放しでは喜べませんね。

 厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によれば、現在介護認定を受けている方は600万人を超えています。65歳以上の人口が約3600万人ですから、6人に一人が介護認定を受けていることになります。介護が必要になった原因を見てみますと、転倒・骨折が12.5%(男性7.1%、女性15.2%)、関節疾患が10.2%(男性5.4%、女性12.6%)でした。運動器疾患全体では22.7%をしめており、脳血管疾患(15.1%)、心疾患(4.7%)、認知症(18.7%)より多い数字となります。
 高齢化率35%の社会がすぐそこまで来ているとしたら、社会の仕組みはもちろんですが、私たち個人も自分の健康やライフスタイルについて真剣に考えないといけませんね。

2022年5月30日

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