第4話 骨の数はいくつ?

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 まじめな話ばかりだと肩がこってしまいます。時々息抜きのためにコーヒーブレイクをとります。別に知らなくても困らないけど、知っていたら人に話したくなるような話題を取り上げましょう。
 さっそくですが、骨の数はいくつでしょうか?確かめてはおりませんが、小学校の理科の教科書にも書かれているそうです。答えはだいたい206個です。「だいたい」と少しぼかして答えるところがみそです。新生児の時は350個のもの骨に分かれているようです。成熟により癒合する骨もありますので、骨の数は年齢とともに減少してゆき、最終的に206個くらいに落ちつくという訳です。
 私の専門としている脊椎(背骨)でも、人によって骨の数が異なることはよく経験します。脊椎は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨の5つの部分に分かれています。そしてそれぞれ構成する椎体の数は、7個、12個、5個、1個、3〜5個と記載されています。
 興味深いことに頚椎の数は個体差がありません。基本的に7個です。しかも、小さなネズミから大きなゾウまで、首の長いキリンや海にすむクジラまで、哺乳類の頚椎の個数は7個と言われています。哺乳類の基本的な発生と関連しているのでしょうか。例外的にマナティーの頚椎は6個、また原始的な骨格を持つナマケモノも頚椎は6個と言われています。
 頚椎と比べて腰椎の個数は人によって差があります。腰椎を5個持つ人が80%、6個ある人が15%、4個しかない人が5%と言われています。これには理由があります。腰椎の下にある仙骨は、もともと5個あった椎骨が癒合して一つの骨を形成しています。4個の骨が癒合して仙骨を形成すると、腰椎は見かけ上6個あることになります。逆に仙骨を作るのに6個の骨が癒合すると、残された腰椎は4個だけということになります。遺伝子的に近いゴリラやチンパンジーの腰椎はふつう4個、ニホンザルでは6個あるといわれています。腰椎の数自体は、あまり大きな問題ではないのかもしれません。
 腰の骨のレントゲンを見ていますと、腰椎と仙骨の境目の骨が、片側が仙骨と癒合しているのに、反対側は腰椎の形のまま残っていることがあります。これを「腰仙移行椎」とよんでいます。腰椎の形が普通と少し違いますと説明すると、「私、何か異常があるんでしょうか?」と心配される方がいます。機能的には全く問題はありませんのでご心配はいりません。以前あるVIPの方の診察をさせていただ時のことです。「腰仙移行椎」のお話をさせていただいたところ、「やっぱり俺は人とは違うと思っていたよ。」とかなりポジティブな返答。さすが大物!腰椎の個数が違っても機能的には問題はありませんが、私たち臨床家からすると、坐骨神経痛の責任病変を診断したり、手術レベルを誤らないようにするためには重要ですので、常に気を付けています。
 最後に骨の数に関係したクイズを一つ、一番骨の数の多い動物は何でしょうか?クイズ番組に出演したつもりで考えてみてください。頭や手足の骨の数は、動物の種類によってそれほど差はありません。ところが椎骨の数には大きな差があります。尻尾をよく使う動物では尾骨が発達しています。そして、細くて長い胴体を持った動物は、胸骨の数がたくさんあります。答えはヘビ、種類にもよるのでしょうが、1000個とも1200個ともいわれています。ためしに骨格標本になったアオダイショウの胸椎(ヘビでは胴椎と呼ぶのだそうです)の数を数えてみたら350個以上、左右の肋骨と合わせて1050個ありました。

2022年5月23日

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