第2話 骨っていったい何?

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 骨は誰でも知っていますね。でも、「骨っていったい何?」って改めて質問されると、ちょっと答えるのに困ってしまいますね。
 少し昔の話をしましょう。江戸時代や縄文時代をさかのぼって、恐竜のいる中生代も吹っ飛ばして、生命が誕生したころの海の中です。地球に最初に生命体が現れたのは、およそ40億年前といわれています。実際に残された最古の化石は、西オーストラリアの35億年前の地層から産出されたバクテリアの化石だそうです。
 骨の起源は、およそ5.5〜6億年前にさかのぼることができそうです。約5億5千万年前、カンブリア紀と呼ばれる時代がありました。この時代に生物の多様化一気に進みました。「カンブリア紀の大爆発」という言葉を知っている方もいらっしゃると思います。
 その中に固い石灰質の殻をもつ「クラウディア」と呼ばれる、数センチメートルの化石が見つかっています。捕食者から身を守るための防御として、外骨格が形成されたのだろうと考えられています。骨の最初の役割は、外敵から身を守ることだったんですね。
 さらに「ピカイア」と名づけられた動物には、ごくごく原始的な「脊索(せきさく)」という構造を持っていました。体長は3.5cm、現在もみられる脊索動物、ナメクジウオのような形をしていたと考えられています。脊索は私たちの持つ脊椎(背骨)の原型です。脊索は神経系の発達を誘導すると同時に、神経を取り囲むように脊索の周りに骨性構造物が集積してきました。いよいよ脊椎動物の始まりです。
 原始的な骨組織はリン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどのミネラルで構成されていました。かたい鎧のような役割を果たしていましたが、壊れてしまったら作り直すことができませんでした。私たちの骨はコラーゲンを主体とする弾力に富むタンパク質と、リン酸カルシウムという固いミネラルで構成されています。そして一番重要な違いは、私たちの骨は「生きている」と言うことです。細胞たちがせっせと働いて、毎日少しずつ作り変えています。これをリモデリングと呼んでいます。
 骨はよく鉄筋コンクリートにたとえられますが、「生きた組織」である点で、鉄筋コンクリートとは決定的に違います。ですから、自分の意思で骨を丈夫にすることもできますし、骨に良くないライフスタイルを続けると骨は早く傷んでしまいます。一生懸命働いている細胞たちの期待にもこたえたいですよね。「骨に良い生活をする」そのコツは別のコラムでお話ししましょう。

2022年5月9日

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