軽度認知障害の独居高齢者に対して、退院支援を行なった一例

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統合的ケア

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○入院中に担当した85歳男性。転倒後、歩けないと受診し、腰椎圧迫骨折の診断となった。独居高齢者だが、キーパーソン不在という情報があった。
腰椎圧迫骨折については、脊椎外科医から、コルセットをしながらのリハビリを勧められたが、本人から着用の拒否があった。軽度認知機能低下があり、MMSEは26点。ADLも低下していたが、退院後は運転をしたいという希望が見られた。
意思決定を促す中で、本人のサポートをしてくれる人がいないのか聞いていったところ、家族は遠方に住む兄弟が一人いるのみで、日常的な連絡はとっていないことがわかった。その代わり、民生委員の定期的な関わりや、二人友人の存在が明らかになった。民生委員、友人2人からも意見をきき、さらに、市役所内に担当者がいることもわかった。
退院に向けて、脊椎外科医、リハビリ、ソーシャルワーカー、病棟看護師に加え、施設内外の専門職種と話し合いを進めた。その結果、本人からコルセットをつけることに了承も得られ、リハビリも進み、自動車の運転についても、運転を控える方向で話し合うことができた。
退院後は、市職員が自宅に訪問しながら、対策を検討してくれたり、友人たちのサポートで、外来通院も継続できることになった。

next stepとしては、
公的なサポート以外に、私的サポート=インフォーマルサポートというものがある。
独居高齢者だと、家族なども身内がいないために私的サポートが受けづらいという特徴はあるが、今回のケースのように、サポートしてくれている人たちが存在することがある。
今後の外来診療でもそういうことを意識していきたい。

ディスカッションでは、
退院に向けて奔走する姿に、家庭医としての専門性を見た、という意見が上がった。
今後の認知機能が低下していった場合、代理決定者 POA: power of attorneyとして、後見人をつけるのかどうか、などが話題になった。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学