学校に行けない 
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家族志向のケア
キーワード
家族志向のケア、家族ライフサイクル
KFCTポートフォリオ勉強会では、専攻医が実際に経験した症例をもとに、診療のプロセスや葛藤、学びを共有しています。今回は、家庭環境が不安定な中で不登校を繰り返す子どもと、その家族への支援を通じて、家族志向のケアの視点を深めた症例が紹介されました。
症例は、小学校低学年で不登校となり、来院した男児です。親は学校に行かないことを強く否定しており、学校やフリースクールとの連携も難しい状況が続いていました。再来院時には、本人が親に気圧されて終始無言で萎縮している様子も見られましたが、医師が本人と親に「この外来を受診する意味」を丁寧に伝え、対話を通じて本人や家族の困りごとや将来の目標に寄り添う関わりを継続していきました。学校の体制も変わり、本人と家族への寄り添ったサポートが継続されたことで、本人の表情や行動にも前向きな変化が見られるようになりました。
勉強会では、担当医の役割として「状況を俯瞰し、保護者の相談相手になること」や「受診が不安定でも継続的に支え続ける姿勢」が挙げられました。指導医からは、「受診の判断が本人ではなく保護者の意向で決まることへの注意」「家族構造全体への視点」「理論的な裏付けをもとにした共通理解の形成」「親の感情への丁寧な関わりと段階的な支援の提示」など、実践に根差した多様な意見があがりました。
本症例を通して、目の前の症状だけでなく、家庭環境や家族の関係性に目を向けることの大切さを学びました。家庭医として、本人だけでなく家族全体を見る姿勢が、長期的な安心と安定につながる可能性があることを実感する機会となりました。

文責:専攻医3年目 山田壮史
このサイトの監修者
亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男
【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学