それぞれの思い 患者も医師ももやもや

林寧先生の発表でした。

高齢男性、過去に運動指導をされるほど活動的だったが、妻の体調不良を契機に移住された方でした。
趣味などに熱心な方でしたが、移住後は膝を痛めてしまい体を動かす機会も減ってしまいました。
歳を重ねるにつれて友人との交流が疎遠になり、別居歴のある妻とはコミュニケーションも希薄、寂しさを和らげるために飲酒量が増えてしまいました。
本人の子供がレシートを見つけ、本人が160g/dayとかなりの量を隠れて飲んでいることが発覚してしまいます。AUDITでは問題飲酒が見られる状態でした。
BPS相関図をもとに本人の状況を(の)評価を行います。
家族はこれを契機に断酒させてしまいます。指導医と相談し、本人に対しては専門家へ紹介(の検討)、家族に対しては家族指導・地域の社会的リソースを提供していく予定です。

本人は飲酒のきっかけは寂しさであり、さらに両側変形性膝関節症によって生活に困難を抱えたことが影響していました。
飲酒を取り上げることの是非について、ディスカッションがされました。
飲酒量のコントロールができている点やアルコールに関する問題行動もないため、適量のアルコール飲酒も考慮されるとの意見も出ていました。
また本人の人生観に寄り添った介入をライフサイクルをもとに考察するのがいいのではないかとの意見も出ました。

岡田先生より:
アルコール依存と考えるにしては、飲酒量のコントロールできていることから"問題"とまで指摘されないでしょう。依存行為は何かに対する行動であり、酒が絶たれた今、どうやって対処するかは気にしなければいけません。
比較的遠かった家族ダイナミクスが近くなったためにその対応に苦慮している可能性があり、本人、妻や子供のナラティブも掘り下げていきましょう。

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このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学