入院期間を通して禁煙アプローチを行い、行動変容を促した1例

エントリー項目

行動変容

Key word

行動変容、健康増進

○内科病棟ローテーション中の症例で、70代男性。COPD・心疾患あり、タバコ数本/日吸っている方。COPD急性増悪で数年ぶりの入院加療を行った。同居の家族も喫煙者だった。入院当日に禁煙宣言をしていたため、プロチャスカの行動変容のステージで準備期と考えられた。しかし、理学療法士に退院後また吸ってしまうかもと言っている様子などから熟考期であると考えられた。

本人に自信度を聞いたら5点。5点の理由はタバコを売っていたら買ってしまうと思う。ただ禁煙したら痰や呼吸困難が収まると思うので重要だとも思っている。本人の健康観としては孫が好きで成人するまでは長生きしたい。自分は禁煙が難しいかもしれないが息子には同じようになってほしくないから禁煙してほしいと思っている。

同居家族は支持的ではなかった。その後家族カンファを行ったところで息子は親をみていると息子自身もやめようとおもうが今すぐではないと。カンファを通しても本人に支援的な体制にはならなかったが、この話し合いのあとで本人はタバコをやめようと思うと言われた。退院数日後に別の主訴で受診した際に本人が実際に禁煙をしており、行動期に移っていることが確認できた。

考察

モチベーションが低い患者に対して家族カンファレンスが本人の短期的な禁煙を促進するというデータがある。

本症例では入院・家族カンファレンスを通して本人の行動変容が起こった症例で、入院症例では急性期だけでなく生活指導の介入も必要と考えた症例だった。

ディスカッションとしては、何が特に本人の行動変容につながったのか、グループで一緒に行動変容をすると上手く行きやすいという文献の紹介、退院後外来主治医に本人が禁煙を強く考えていることを申し送りすることの重要性、家族カンファレンスの準備の仕方の共有、レジデント自身のNext Stepなどが議論されました。

参考文献:
Huang FF, Jiano NN, Zhang LY, Lei Y, Zhang JP. Effects of a family-assisted smoking cessation intervention based on motivational interviewing among low-motivated smokers in China. Patient Educ Couns. 2015, vol. 98, no. 8, p. 984-90.

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学