心理士勉強会「アドラー心理学で考える子育てのヒント」

当院では毎月第4週火曜日の昼に心理士と勉強会を行っています。
先日は心理士さんとのアドラー心理学をベースにした子育ての勉強会を行いました。

アドラー心理学は、特に「叱らない」「褒めない」関わり方で有名ですが、 勉強会でも、その点が主に学びになりました。

賞罰の功罪

子供がいけないことをしているとついつい「罰」を与えたくなってしまいます。
例えば、宿題やらなかったからおやつは抜き、 悪い点をとったからゲーム没収など。

しかし、子供がいけないことをした時に罰を使うことは、
一次的には良いかもしれませんが、 様々な「副作用」もあります。

それは長期的には、親子関係が悪くなり、 罰がなくなった途端に不適切な行動が増え、 見つからなければ良いと思うようになることです。

また、子供が良いことをした時には「報酬」を与えたくなってしまいます。 宿題をしたから、おやつを食べていいよ、 良い点をとったらゲームを買ってあげるなど。

さまざまな育児本にも、良いことをしたら褒めなさいと書いてあることも多いと思います。

しかし、子供が良いことをした時に賞を使うことも即効性があるかもしれませんが、 「副作用」もあるとアドラーは指摘します。

賞がなくなった途端に適切な行動がへることや、 賞の要求もエスカレートする危険性です。 終いには、行動の本来の目的を見失います。

何よりも善悪の基準が子供の中に芽生えず、
結果子供のためにならないということが起こります。

それでは何をもって子供と関わることが必要でしょうか。
3つの方法があるとアドラーは述べてます

自然な結末を本人が知ること

例えば、

  • 高いところから落ちると痛い。
  • 物を落とすと壊れる。
  • 宿題をしないと、テストで良い点を取れない。
  • テストで良い点を取らないと、将来の可能性が狭まるなど。


アドラーは実際に失敗をしたとしても、そこから学んでいくことが大切と述べます。それが一番の学びになると。

そして、親は結果に対する気づきを作る関わりをします。
例えばその結果に対して「何を学んだ?」「どうすれば良かったか?」などを聞いていきます。

ただ、危険だったり、ショックが大きそうだったり、 結末の結果が重大そうな場合は、 事前に阻止することも必要です。

論理的結末を本人が知ること

先ほどの、自然の結末を知ることが、 自然な行動に対しての対応だとすると、 これは不適切行動に対して適応されます。

例えば、レストランで大声で騒いだ子供をすぐに外に連れ出すこと。
その際のポイントは以下の通りです。

  • 行動と結末の関係が合理的で妥当である。レストランで大声で騒ぐと他の人に迷惑がかかるので、外に出るのは妥当な結果である。
  • 事前に結末の可能性を伝え相手が納得していることが必要。
  • 親が感情的になっていないこと。
  • 親も同じようなことがあれば適応されることも重要。

勇気づけ

3つめは、何よりもアドラーが大切にしている勇気づけです。

勇気づけでは、不適切な行動ではなく、適切な行動に注目して、その子の「長所」「能力」を探し、「承認」することです。

"植物に水が必要なように、子供には勇気づけが必要である"

そして、やってはいけない行動があった場合には、すぐその場で伝えるのではなく、落ち着いて話せる時に話すことが大切と述べています。

まとめ

アドラー心理学の育児は、これまでの育児とは異なった方法論を採用しており、
そのため、最初はかなりの驚きと違和感を感じるかもしれません。

ただ、すでに100年近くの伝統があり、日本でも20年以上の実践が積み重ねられています。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学