午後の陽光、ポン=ヌフ

エントリー項目

研究

Key word

引き継ぎ、Handoff、継続性、BPSモデル、エラー

post18.jpg

○本日は久保田希先生が先輩医師より引き継いだ患者に起きた予定外入院の経験から、「引き継ぎ」のメリット、デメリットを考察したポートフォリオであった。

2016年3月から5月の間に約40名の患者を離職した先輩医師から引き継いだ。その中で、陳旧性心筋梗塞の既往があるADL自立の70代男性が引き継ぎ初診の外来で胸痛の頻度が増えていることを訴え、また内服に関して飲み忘れ、過剰内服が初めて発覚した。翌日循環器科へ紹介し虚血性心疾患の診断で緊急入院となった症例を経験した。退院後2回目の外来で、持参された5年分の残薬を整理し、患者から「今までずっと困っていたけど、聞いてもらったことがなかった。よかった。」という発言があった。

この経験から、引き継ぎは、新しい目が入ることで疾患や治療内容の見直し、新しい関係性が構築される中で患者の本音を引き出せるなどのメリットと同時に、症状の悪化や通院が途絶えるなどのデメリットもあるのではと考えた。先行文献では引き継ぎ時のエラーに関する研究、引き継ぎ方法についての研究、引き継ぎシステム導入によるエラー減少の研究を引用し、Saultzによる継続性の定義まで言及された。

また家庭医の紹介状の内容をBiomedical、Psychosocialで色分けし、臓器専門医と比較しPsychosocialな内容を多く含んでいるのではないかという議論となった。今後はAAFPのtransitional care management 30-day worksheetのような引き継ぎのフォーマットを用いて、引き継ぎ時の紹介される側のストレスの軽減、患者のイベント発生の軽減を目指したい。題名はピサロが描いた絵画であるが、ポン=ヌフは「新しい橋」という意味がある。これまでの継続性を見直し新しい架け橋をかけたいという発表者の思いが込められている。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学