ちょっとためになる話27:脊椎・脊髄に関連した歴史2

古代インカ帝国の穿頭(せんとう)術

 「マチュ・ピチュ」の名前を知っている方は多いと思います。標高2400mのアンデス山麓にあるインカ帝国の遺跡です。インカ帝国が最も栄えたのは15世紀頃でしょうか。インカでは古くから穿頭術(頭蓋骨に穴を開ける手術)が行われていました。インカの遺跡からは、穿頭術に使われた黒曜石のノミや銅製のナイフとともに、人為的に穴の開けられた頭蓋骨が沢山出土しています。宗教的な意味合いが強かったと考えられていますが、一部は治療目的で穿頭術が行われたと推定されています。マチュ・ピチュの遺跡に画かれた壁画から想像すると、麻酔薬にコカの葉をかみながら治療が行われたようですから、想像するほどは痛みを感じなかったのかもしれません。それにしても、500年も前にアンデスの山麓で行われていた穿頭術、これも驚きですよね。

近代医学の進歩

 レントゲンを発見したのはドイツの物理学者ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンです。1895年のことでした。彼はこの功績により第1回ノーベル物理学賞を受賞しています。CTスキャンはイギリスの技師ハンスフィールドの発明 (1972年)、 MRIはアメリカのローターバーとイギリスのマンスフィールドの功績と言われています(1977年) 。CTもMRIも当たり前のように使われていますが、画像診断が進歩したのはつい最近のことなんですね。
 1800年代の終わり頃から、脊椎手術が少しずつ報告されるようになってきました。脊椎の手術が今のスタイルに変わってきたのは、手術用顕微鏡の導入と脊椎の固定技術(インスツルメント・サージェリー)の発達に負うところが大きいと思います。手術用のナビゲーションも実用化されています。今注目されているのは、再生医療と医療用ロボットでしょうか。今後の発展が楽しみですね。

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療