ちょっとためになる話28:脊椎脊髄腫瘍の話1

 今回は「脊椎脊髄腫瘍」についてお話しします。
-腫瘍って「がん」のことですか?・・・「背骨のがん?」・・・あんまり聞いたこと無いな~~。
 うーん、ちょっと違います。「悪性新生物」のことを一般的に「がん」と呼んでいますね。でも、神経系(脳や脊髄)に発生した場合は、「がん」とは呼ばずに「腫瘍(しゅよう)」と呼んでいます。脳から発生した場合は「脳腫瘍」、脊髄の場合は「脊髄腫瘍」という具合です。
 それから、「がん」っていうと通常「悪性」ですが、「腫瘍」というのは「良性=たちの良いもの」もあるし、「悪性=たちの悪いもの」もあります。
ちょっとややこしいですね。

原発性腫瘍と転移性腫瘍

 脊髄と脊髄神経(正確には「神経根」)、そしてその周辺組織織(硬膜、椎骨)に発生した腫瘍を総称して「脊髄腫瘍」と呼んでいます。他の臓器と同様、「原発性(げんぱつせい)腫瘍」と「転移性(てんいせい)腫瘍」があります。
 「原発性腫瘍」は人口10万人あたり1〜2人程度と推定されています。千葉県の人口が約600万人ですから、県内での発症は毎年60〜120人くらいとなる計算でしょうか。基本的には手術治療が行われます。治療はかなり難しい病気ですが、幸いなことに発生頻度はそれほど高くはありません。
 一方、「転移性腫瘍」についてはもう少し事情が深刻です。報告により数値が異なりますが、癌患者さんの5〜?10%が脊椎転移を来すといわれています。日本の統計では、癌で死亡する患者さんは人口10万人あたり毎年300人くらいです。この数値をもとに計算すると、千葉県内では900〜1800人の癌患者さんが「脊椎転移」を来していることになります。転移性腫瘍の場合には化学療法や放射線治療が選択されることが多く、必ずしも手術が適応となるわけではありませんが、脊椎手術が必要となる場合があります。

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療