成人の季節性インフルエンザ 2017/2018シーズン update 〜その2 治療〜

前稿に引き続き、季節性インフルエンザの最新情報についてまとめます。
本稿では季節性インフルエンザの治療について解説します。

季節性インフルエンザにおける抗ウイルス薬の意義

・インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の効果は、発症48時間以内に投与された場合に最大となる。

・ただし、抗ウイルス薬は、合併症リスクのないインフルエンザ患者では、有症状期間を半日〜3日短縮するものに過ぎない。よって、基礎疾患がなく、全身状態良好の場合には、抗ウイルス薬を処方しないという選択肢もある
(青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル 羊土社2015年4月 東京)

抗ウイルス薬の投与対象

・重症患者(下気道感染症を有する患者や入院を要する患者)は、発症からの時間、日数に関わらず、抗ウイルス薬の投与が推奨される。

表1に示す合併症リスクのある患者については、発症48時間以内、もしくは発症48時間以降でも症状改善が得られていない場合は治療対象となる
(Flore AE et al. MMWR Recomm Rep. 2011;60(1):1. )

表1 インフルエンザの合併症リスクのある患者

5歳以下、特に2歳以下
65歳以上
下記の基礎疾患を有する者
- 喘息、COPD、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、糖尿病を含む内分泌疾患、神経筋疾患、代謝性疾患
免疫抑制患者(HIV感染者、担癌患者、免疫抑制剤投与中)
妊娠中
長期アスピリン投与中の19歳以下
肥満(BMI≧40)
施設入所者

(Flore AE et al. MMWR Recomm Rep. 2011;60(1):1. )

表1に示すような合併症リスクのない患者においては、症状が軽微であれば積極的な抗ウイルス薬投与は不要である

・表1に示す合併症リスクがあっても、症状が軽微で、発症48時間を超えていれば、抗ウイルス薬投与の必要性は低い。

季節性インフルエンザに対する抗ウイルス薬の選択

・Oseltamivir(タミフル)が第一選択薬である。Oseltamivir耐性ウイルスの可能性があれば、Zanamivir(リレンザ)が推奨される。吸入のZanamivirは、重症の入院患者には推奨されない

重篤な状態で、内服のOseltamivirの投与が困難な場合は、Peramivir(ラピアクタ)の静注が推奨される
(Flore AE et al. MMWR Recomm Rep. 2011;60(1):1-64)

抗ウイルス薬の予防投与

・表2に示す対象には抗ウイルス薬の予防投与が推奨される。第一選択はOseltamivirである。
(Kimon C Zachary et al. Prevention of seasonal influenza with antiviral drugs in adults. Up To Data. last updated Dec 2017.)

表2 抗ウイルス薬の予防投与の推奨度が高い者

インフルエンザのアウトブレイクが発生した施設の入所者
インフルエンザワクチンを摂取していない合併症リスクの高い患者(表1)が、インフルエンザ患者に接触して48時間以内
ワクチンによる抗体上昇が得られにくく、かつ合併症リスクの高い患者(表1)が、インフルエンザ患者に接触して48時間以内
合併症リスクの高い患者(表1)に接する健常者や医療従事者が、インフルエンザ患者に接触した場合


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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患