過敏性肺炎 〜特徴的な病歴が診断のヒント〜

過敏性肺炎は、疑わなければ診断ができない疾患です。
特徴的な病歴から、いきなり診断の核心に迫ることができることが醍醐味です。
最近、当院でも急性過敏性肺炎を経験したのでまとめました。

概念

・過敏性肺炎は、細気管支から肺胞を主座とするびまん性間質性肺炎である。

・生活環境に存在する抗原の反復吸入により感作され、III型およびIV型アレルギー反応を介して発症する。

・過敏性肺炎の原因となる抗原は100以上存在し、鳥関連過敏性肺炎、農夫肺、加湿器肺、夏型過敏性肺炎の順に頻度が高い。
(Lacasse Y. et al. Am J Respir Crit Care Med. 2003;168:952-958)

分類

1 急性過敏性肺炎
・原因抗原への濃厚な暴露による急性のエピソードを示す。

2 慢性過敏性肺炎
・少量の抗原を長期間にわたって吸入して発症する。急性のエピソードを欠き、潜行性に咳や、呼吸困難、体重減少などが進行する。抗原からの隔離でも症状の完全寛解は得られない。
(青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル 羊土社2015年4月 東京)

症状

・急性型では抗原暴露から4-6時間で乾性咳嗽、発熱、呼吸困難が出現する。胸部聴診では両肺野にfine cracklesを聴取する。

・慢性型では、進行性に咳嗽や、呼吸困難、体重減少などが進行。進行例にはばち指が認められる。

表1 原因抗原:一部原因が不明のものは(?)で表示している。

疾患名 発生状況 抗原
鳥関連過敏性肺炎 鳥飼育
自宅庭への鳥飛来
鶏糞肥料使用
鳥排泄物
剥製 羽毛
羽毛布団使用 羽毛
間接暴露 近隣のハト、公園・神社・駅の野鳥
夏型過敏性肺炎 住宅 Trichosporon asahii
Trichosporon mucoides
住宅関連過敏性肺炎 住宅 Candida albicans, Aspergillus niger, Cephalosporium acremonium, Penicilliumなど
加湿器肺 加湿器使用 Aspergillus
flavus(?) Phoma herbarum(?)
農夫肺 酪農業 Saccharopolyspora rectivirgula
Thermoactinomyces vulgaris, Absidia corymbifera, Eurotium Amstelodami
トラクター運転 Rhizopus属
塗装工肺 自動車塗装 イソシアネート
小麦粉肺 菓子製造 小麦粉
キノコ栽培者肺 シイタケ栽培
エノキダケ栽培
シイタケ胞子
エノキダケ胞子(?)

(下記文献を参考に作成。
吉澤靖之. 胸部臨床 2016;75:2-18.
青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル 羊土社2015年4月 東京)

検査所見

・血液検査:急性型では、白血球増多、CRP上昇、LDH上昇など。間質性肺炎マーカーであるKL-6、SP-Dが高値を示す。抗原に対する特異的IgG抗体が陽性となる。

・呼吸機能検査:拘束性換気障害と拡散障害を認める。

・画像検査:急性型では、胸部X線では中下肺野を主体とする均一で辺縁が不明瞭なびまん性粒状陰影を呈することが多いが、軽症例ではすりガラス陰影や、正常の場合もある。CTでは淡い肺野濃度の上昇や、淡い小葉中心性粒状影として認められる。慢性型では、特発性肺線維症と類似の進行性の線維化、蜂巣肺と肺容積の減少を認めるが、繊維化が上葉に強い。
(青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル  羊土社2015年4月 東京)

図 当院で経験した急性過敏性肺炎の胸部CT所見。
両肺にびまん性の小葉中心性粒状影を認める。

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・気管支肺胞洗浄:急性型では、細胞数増加、リンパ球増加を認める。リンパ球比率は20%以上に上昇していることが多く、しばしば50%を超える。CD4/CD8比は一般的に1.0以下となる。ただし農夫肺ではむしろ上昇する。慢性型ではリンパ球の増加は軽度で、CD4/CD8比は上昇する傾向にある。
(D'Ippolito R et al. Respir Med. 2004 Oct;98(10):977-83.)

・肺生検:経気管支肺生検(TBLB)もしくはVATS(video-assisted thoracoscopic surgery)が確定診断には必須。TBLBでは、陰影のある場所から、5-7個の検体を採取する。壊死をともなわない類上皮肉芽腫、胞隔炎、マッソン体を認める。
(青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル  羊土社2015年4月 東京)

診断

・特定の場所で症状が出現、繰り返す肺炎などの特徴的な病歴からまず過敏性肺炎を疑うことが重要。

・急性過敏性肺炎の本邦の診断基準を表1に示す。

・診断においては症候が抗原回避により改善し、環境誘発により再燃することが重要である。

表2 急性過敏性肺炎の診断基準

A.臨床像:臨床症状・所見1)〜4)のうちいずれか2つ以上と、検査所見1)〜4)のうち1)を含む2つ以上の項目を同時に満足するもの
1.臨床症状・所見
 1)咳、2)息切れ、3)発熱、4)捻髪音ないし小水泡性ラ音
2.検査所見
 1)胸部X線像にてびまん性散布性粒状陰影(またはスリガラス状陰影)
 2)拘束性換気機能障害
 3)血沈値亢進、好中球増多、CRP陽性のいずれか1つ
 4)低酸素血症(安静時あるいは運動後)

B.発症環境:1)〜6)のうちいすずれか1つを満足するもの
 1)夏型過敏性肺炎は夏期(5〜10月)に高温多湿の住宅で起こる
 2)鳥飼病は鳥の飼育や羽毛と関連して起こる
 3)農夫肺はかびた枯れ草の取り扱いと関連して起こる
 4)空調病,加湿器肺はこれらの機器の使用と関連して起こる
 5)有機塵埃抗原に曝露される環境での生活歴
 6)特定の化学物質と関連して起こる
注:症状は抗原曝露 4〜8時間して起こることかが多く、環境から離れると自然に軽快する。

C.免疫学的所見:1)〜3)のうち1つ以上を満足するもの
 1)抗原に対する特異抗体陽性(血清あるいはBAL液中)
 2)特異抗原によるリンパ球増殖反応陽性(末梢血あるいはBALリンパ球)
 3)BAL所見(リンパ球増加、Tリンパ球増加)

D.吸入誘発:1)、2)のうち1つ以上を満足するもの
 1)特異抗原吸入による臨床像の再現
 2)環境曝露による臨床像の再現

E.病理学的所見:1)〜3)のうちいずれか2つ以上を満足するもの
 1)肉芽腫形成
 2)胞隔炎
 3)Masson体
【診断基準】
確実:A、B、DまたはA、B、C、Eを満たすもの
強い疑い:Aを含む3項目を満たすもの
疑い:Aを含む2項目を満たすもの

・慢性過敏性肺炎の確立された診断基準はないが、本邦で表3に示す吉澤の診断基準(案)が使用されている。

表3 慢性過敏性肺炎の診断基準(案)

1.環境誘発あるいは抗原誘発試験で陽性
2.組織学的に線維化が観察される(肉芽腫の有無は問わない)
3.HRCTで線維化所見とhoneycombが観察される
4.肺機能の拘束性障害が1年以上にわたって進行性である
5.過敏性肺炎と関連した症状が6カ月以上続く
6.当該抗原に対する特異抗体あるいはリンパ球増殖試験かが陽性か、両者が陽性
以上、1か6、および2か3、および4か5の3項目以上を満たせば慢性過敏性肺炎と診断する。

付記として
1)環境誘発試験は陰性のこともあるかが、抗原誘発試験は陽性となる.この場合,症状の発現は弱くても、白血球数、CRP、PaO2、DLcoなどの検査所見の変化だけでも陽性と判定する。
2)病理学的所見では肉芽腫はほとんど見られず、限局性のhoneycomb、リンパ球主体の胞隔炎とリンパ球の集簇が見られる。
3)症状は抗原吸入を持続しても軽くなることが多い.労作時呼吸困難が主な症状である。
4)抗体が陰性で抗原添加リンパ球増殖試験だけが陽性の例も見られる。
5)KL-6、SP-Dは高値。
6)慢性過敏性肺炎の発症環境として、カビの多い住宅や仕事場、羽毛布団使用、隣人の鳩飼育、公園・神社・ 駅の野鳩、野鳥の集団棲息などがある。

(大谷義夫ら. 綜合臨牀 2007;56 : 1012―1025)

治療

・抗原回避:原因抗原の内容に関わらず、本症を疑った場合は、原則的に入院させる。

・抗原除去:予防の目的で重要。夏型過敏性肺炎では、日当たりや風通しの悪い場所を中心に畳替をふくむ大掃除を行う。加湿器肺では、フィルターの交換や器材を清潔にする。鳥関連過敏性肺炎では、羽毛布団の使用や、鳥の飼育などをやめさせる。農夫肺では防塵マスクを使用する。
(青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル  羊土社2015年4月 東京)

・薬物療法:急性型の軽症例は入院のみで軽快する。中等症以上には短期的に副腎皮質ステロイドを全身投与することが多い。重症例ではステロイドパルス療法を行う。
(久保惠嗣,藤田次郎 編.間質性肺疾患診療マニュアル 改訂第2版 南江堂 2014年 東京)

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参考文献

  1. 青島正大 編. 亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル 羊土社2015年4月 東京
  2. 大谷義夫ら. 綜合臨牀 2007;56 : 1012-1025.
  3. Lacassse Y. et al. Am J Respir Crit Care Med. 2003;168:952-958
  4. 吉澤靖之. 胸部臨床 2016;75:2-18.
  5. D'Ippolito R et al. Respir Med. 2004 Oct;98(10):977-83.
  6. 久保惠嗣,藤田次郎 編.間質性肺疾患診療マニュアル 改訂第2版.南紅堂 2014年 東京