ばち状指を見たときに考えるべきことは?

ばち状指は、呼吸器疾患患者で、頻度が高い所見です。

呼吸器疾患以外の患者でも認める場合があり、ばち状指の意義・鑑別診断についてまとめてみました。


ばち状指とは?

呼吸器疾患患者にみられる身体所見で、手指が太鼓のばち状に変形した状態である。

正常な指は、爪と軟部組織の角度が約160度である。ばち状指の場合、この角度が180度以上になってくる。

ばち指が起きるメカニズムは十分に明らかにはなっていない。血小板由来成長因子(PDGF)などの体液性増殖因子が動静脈シャントによって不活性化が抑制され、結合組織の過形成をおこすという1つの仮説がある。
(Medical Practice 2009:26:p878-879)

(軽度のばち指の所見)
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ばち状指がみられる疾患

  • 肺癌
  • 肺癌患者738例を対象とした研究では、肺癌患者の17%にばち状指が認められ、非小細胞癌と小細胞癌で頻度に差は認めないが、男性18.6%、女性4.4%と男性に有意に多かったと報告されている。
    (Ann Saudi Med. 2002 Sep-Nov;22(5-6):295-6.)

    COPDのみでは、ばち状指の頻度は低いと考えられており、「COPD患者にばち状指を認めたら、肺癌の合併を疑う」という米国の有名な内科医ティアニー氏も提唱するクリニカルパールがある。

  • 間質性肺疾患
  • 特発性肺線維症では、ばち状指の頻度が多い。

    本邦の55例の特発性肺線維症の検討では、67%にばち状指を認めた。
    (Chest. 1994 Feb;105(2):339-42.)

  • 心疾患
  • 感染性心内膜炎、チアノーゼを伴う先天性心疾患でばち状指を認める。
    (Singapore Med J. 1990 Oct;31(5):480-5.)

  • 消化器疾患
  • 肝硬変や、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)で、ばち状指を認める場合がある。

    約300例の炎症性腸疾患を対象とした研究では、クローン病の38%、潰瘍性大腸炎の15%にばち状指を認めた。
    (Br Med J. 1979 Oct 6;2(6194):825-8.)

  • 内分泌疾患
  • 一部の内分泌疾患(甲状腺性肢端肥大症、副甲状腺機能亢進症)では、ばち状指を認める。
    (Hemodial Int. 2007;11:193-7.)

肥大性骨関節症(Hypertrophic osteoarthropathy: HOA)

肥大性骨関節症(HOA)は、(1)手指・足趾のばち状指、(2)四肢長管骨遠位端の骨膜の新生、(3)関節炎を3徴とする症候群で、呼吸器疾患に出現することが多く、約90%で胸部悪性疾患を合併する。
(呼吸 2012;31:45-49)

ばち状指は、単独で出現するだけでなく、HOAの一症状としても出現しうることを理解しておく。

まとめ

ばち状指を認めたら、呼吸器疾患(特に肺癌、特発性肺線維症)や心疾患(先天性心疾患、感染性心内膜炎)、肝硬変、炎症性腸疾患を鑑別診断に挙げる。

COPD患者にばち状指を認めたら、肺癌の合併を疑う。

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