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終末期 (高齢者、多職種協働)

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多職種協働、終末期の意思決定支援


専攻医2年目の近藤先生のポートフォリオ発表でした。今回は、多職種チームで「嵐を乗り越えた」事例として、多職種の方にも参加していただき、盛り上がった発表でした。
症例は肺癌多発転移の高齢男性で、外来通院中に徐々にADLが低下し、介護認定申請など早め早めに手を打っていったが、病勢の進行と9月、10月と訪れた台風の影響で、続々と問題が発生した。多職種チームで連携して、問題の嵐を乗り越えてきたと思っているが、果たして、もっとできることがあったのではないか?

【全体ディスカッション】
誰が何を心配して動いているのか、見直すのが重要との指摘があった。医療職の心配が先走ってしまい、患者の思いが置いていかれている可能性があった。ポイントとしては、外来通院への拘り、訪問診療への拒否感がどこからきたのか?癌と闘ってきたという自尊心は重要な要素かもしれない。
妻の評価(認知機能含む)を行ってもよいとの提案もされた。問題が複雑になると、処理しきれず「不安」として表出されている可能性が高く、より具体的な支援が必要になるだろう。さらに長男夫婦をうまく巻き込んで対応が必要になることが共有された。家族志向的には、家族ライフサイクルとして、家族における「意思決定者の変化」(政権交代)が起きている可能性もあり、今後、医療職やCMが動くのではなく、長男が決めるというのは、家族ダイナミックスに変化を起こすかもしれない。

【岡田院長から】
発表において、出来事の記述は多いが、医師の洞察が「腑に落ちない」感じがあり、おそらく医師本人も腑に落ちていないのだろう。complex caseはその場では正解はわからないので、動くしかない。今状況が落ち着いたのであれば、後から振り返って、何がよかったのかが見られるとよい。そういう視点から、嵐の中の自分にアドバイスするとしたらなんだろうか?complex caseではあえて「何もしない」というのは重要な選択肢だが、勇気のいる選択肢。システムは動的平衡なので、時間を経ることで物事は変化しうる。

【吉田先生(麻生飯塚よりゲスト参加)】
呼吸器内科と連携して、方針をまとめていけたのは非常によかった。complex caseであり、Multimorbidity、進行した肺癌、糖尿病、易転倒性など、どれで悪くなるのかが見えない。夫婦とも認知機能の問題があり、物事が決まらない可能性が高い。脳転移が起きていることで機能障害は起きていると考えて良いだろう。指導医と一緒に、意思決定がどこまで決められるのかを評価してもよいのではないか。Healthが掴めない場合は、長く付き合っていた人に聞いてみるのが良い場合もある。家族や主治医に聞くのも手だろう。全員を集めてのカンファレンスをしていく必要があるだろう。家族も含めて、「できること、したほうがよいこと」など共有して摺り合わせるのがよい。このような不安定なケースでは、一度入院して立ち直すのも手段としてある。

文責:河田(専攻医3年)

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学