医原性尿路損傷の修復術

【Boari Flapその前に】

30歳台女性、子宮頸がん術後の右尿管損傷の診断でステント留置。
U2に狭窄部位を認めステント留置されていました。
何度か腎盂腎炎を繰り返し、ステント留置+自己導尿の方針となっておられましたが、その後も腎盂腎炎となるため、相談にいらっしゃったケースです。

CTではステントが留置されていますが、水腎症を認めます(膀胱に残尿はありません)。この時点でまず、腎盂腎炎の原因になっているドレナージ不良を改善する必要があります。

次にRP像です。U2であきらかな狭窄部位を認めU3まで続きます。尿管の蠕動もありません。
ステントはスムースに留置できるものの、腎盂にステント先端が留置されないことから、尿管を軟性ダイレーターで拡張後2本ステント留置することにしました。 これで自然軽快すれば、万々歳。
3ヶ月間の観察期間を経て、再度RP施行。しかしながら、狭窄部位に改善は認めず、再建手術の方針となりました。再建手術を行えればすぐやった方が良いと考えられるかもしれませんが、手術に伴う後腹膜線維症などの可能性も考慮しておく必要があります。

手術前のシュミレーションで、下部尿管の状態が良ければ、尿管尿管吻合を第一、次にBoari Flap、膀胱が伸びなければ回腸尿管が必要となります。

手術で一番苦労する点は、腸管の癒着剥離です。腸管剥離の技術、損傷時の対応などに備えておく必要があります。尿路再建手術は「癒着剥離の手術」と言っても過言ではありません。

実際、回盲部、付属器、子宮摘除部の癒着が強く、特に尿管と血管交差部の癒着剥離は心が折れそうになる局面にも出くわします。


血管交差部の尿管

上部の拡張した尿管が剥離された時点で、下部尿管の剥離を行うのですが、癒着が強く、仮に剥離できたとしても尿管尿管縫合では難しいと感じました。それと、切断予定の尿管断端と膀胱が比較的近くBoari Flapの方針となりました。


きれいな尿管であることを確認。


Flapを作成


導管部分を縫合 (粘膜はモノフィラメントで連続縫合、筋層はブレイドによる結節縫合を行います。)


Boari Flapの導管部分は腸腰筋に固定し、膀胱尿管縫合し手術は終了です。

ご本人から、担当医より「腎摘」あるいは「一生腎瘻管理」と告げられていたようです。他のケースでも、同じような・・・。ケースカンファレンスでは「この間もそんな話でしたよね?」と。

医原性尿路損傷の修復術はチャレンジングな手術です。ですが、自分だったらどうして欲しいか胸に手を当ててみると良いでしょう。
自ら進んで取り組んで頂きたいと思います。
ご興味ある先生は是非、亀田総合病院にいらしてください。

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術