医原性尿路損傷 右尿管損傷の治療

医原性尿路損傷とくに術後に確認されるケースがほとんどです。

  1. 尿管ステントあるいは腎瘻留置
  2. 3ヶ月後尿管の状態を再度確認
  3. 尿管狭窄があれば尿管膀胱新吻合術

の流れです。

尿管ステントが留置できたことで、断裂や結紮による可能性はありません。
とすると、尿管の一部に損傷あるいは周囲の浮腫などで狭窄となるケースです。一番疑わしいのはエネルギーディバイスでの熱が尿管周囲に及び尿管の変性を起こしてしまったと考えられます。同部で尿管の同定は難しく、動画などでおそらくこの熱エネルギーだろうと検討されることもあります。

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尿管ステントが留置されたことで、ひとまずは腎機能の確保ができます。そして、尿管が自然に軽快するかどうか自然経過を観ます。3ヶ月経つとだいたいの傷は治癒段階にあると考えられます。3か月後にステントを抜去し水腎症がなければ様子観察しますが、本症例では水腎症が再燃したため尿管ステントを再留置しました。
腹部手術のあとは3ヶ月以内は急性期の反応で癒着が高度となるため、できれば6か月は待機し再手術とすることが多くなります。
エネルギーディバイス(energy based surgical devices:ESD)が遅発性の尿管損傷の原因とした論文があります。参考文献参照ください。
エネルギーディバイスとくにバイポーラをベースとしたディバイスは熱を多く発生します。このためしっかりとしたシーリングで止血効果は高くなる一方、周囲への影響(尿路、神経など)への配慮が必要となります。
エネルギーディバイスは便利で手術時間短縮、手技の簡素化などその恩恵は計り知れませんが、手術手技の見直しなど立ち止まって考えることも必要かとも思います。

尿管膀胱新吻合は逆流防止処置にて尿管ステントを留置し、6POD膀胱留置バルーン抜去、7POD退院となりました。
6週間で尿管ステントを抜去します。

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尿管周囲はしっかりとアワアワの層で剥離します。

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尿管断端に血流がしっかりあること、尿管粘膜の状態が正常であることを確認しましょう。

参考文献)
Delayed-onset ureteral lesions due to thermal energy: an emerging condition. Selli C, Turri FM, Gabellieri C, Manassero F, De Maria M, Mogorovich A. Arch Ital Urol Androl. 2014 Jun 30;86(2):152-3.

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術