スポーツ医学とは27- ゴリッと音が鳴る!?股関節の関節鏡手術について

股関節は膝関節と同様、体重を支えている大変重要な関節です。膝関節同様、ボール(大腿骨頭)と受け皿(臼蓋)、さらに受け皿を取り囲む土手の軟骨(関節唇)から構成されています。そして股関節の特徴としては、この臼蓋がかなりしっかりと大腿骨頭を覆っていることがあげられます。

この特徴のために、多少股関節周囲の筋力が落ちても大腿骨頭が臼蓋の中でひどく不安定になることはあまりなく、関節唇もそう簡単には損傷を受けません。ですから、これまではよほど先天的に臼蓋が浅い女性などでない限り、関節唇損傷は積極的に疑われず、診断されてきませんでした。

しかし、近年わかってきたのですが、スポーツ選手においては決してこのようなことがなく、強い衝撃力やねじれ力がかかるアスリートの場合、かなりの頻度で股関節唇が損傷しています。そして、これが断裂して股関節内でひっかかるようになると、股関節をひねった時にゴリッという音が鳴るようになります。

この股関節唇損傷を診断するには、理学所見はもちろん、MRI画像所見も大変重要です。関節内を造影剤のような液体で満たし、股関節を引っ張りながら撮影するといった工夫が必要で、専門施設でないと見逃されてしまうことがあります。万が一このような股関節唇損傷がみつかると、まずは保存的に股関節の後方の固さをとるようなストレッチを実施します。これにより、当院では半数以上の方の症状が改善しています。一方、こういった運動療法にて症状の改善が認められず、競技や日常生活に支障をきたすようなひっかかりが持続する場合は、関節鏡視下に手術を実施しています。

これは股関節の前方及び側方に計3?4箇所の小さな穴(約1cm)を開けて、そこから内視鏡を関節内に挿入し、映像が映し出される画面を見ながら手術するというものです。これにより、断裂した関節唇を縫合し元の位置に戻すか、損傷が強い場合には部分切除して軟骨の破片がこれ以上関節内に生じにくいようにします。

こういった治療により、当院では多くの股関節疾患の方の症状が改善してきています。股関節のゴリッというひっかかりにはいくつかの原因があります。股関節のひっかかりの原因がわからず困っている方は、是非当院スポーツ医学科までお越しください!

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スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法