スポーツ医学科?整形外科?どちらにかかればよいの?

よく患者さまに質問される当院の「スポーツ医学科」と「整形外科」の違いについて書きます。

スポーツ医学科の医師は整形外科医ですので、もちろん様々な整形外科疾患に対応可能です。しかし、その中でも専門としているのが、「スポーツ整形外科」「関節鏡手術」です。
「スポーツ整形外科」では、スポーツや肉体労働に伴って起きた各種障害を対象とします。障害としてはスポーツや労働に伴ったオーバーユース(使い過ぎ)により生じ、痛めてしまったエピソードがはっきりせず、「気づいたら痛かった」などというものが多いです。また、脱臼したりひねったりと受傷したエピソードがはっきりある場合でも、その後なかなか症状が改善せず、関節の不安定な感じ、ひっかかる感じなどが慢性的に継続してしまうといった場合もスポーツ整形外科の対象疾患となります。
スポーツ医学科が対象にしているのはこういった非緊急疾患ですので、治療する上で手術がいきなり必要になることはほとんどなく、90%以上が運動療法にて治療可能です。問題部位の筋力強化、周囲の関節の柔軟性獲得、などさまざまな運動療法を理学療法士やアスレチックトレーナーと日々相談しながら実施しています。

先ほどスポーツ医学科で治療する疾患の90%以上が運動療法にて治療可能と述べました。それでは運動療法で治療が困難な残る10%はどのような場合でしょうか?これは関節内に器質的な(構造上の)問題が生じてしまっている場合です。例えば関節内で靱帯が切れてしまった、関節内の軟骨がはがれてしまった、といったような場合です。そこで登場するのがもう一つのスポーツ医学科の専門である「関節鏡手術」です。これは1?程度の皮膚切開から関節鏡という内視鏡のようなカメラを関節の中にいれて行う手術で、高度なテクニックを要するため、日本全国でも症例数の多い施設が限られている手術です。スポーツ医学科ではスポーツ選手に対して仮に手術が必要になっても早期に復帰していただくため、95%以上の手術をこの身体への負担の少ない「関節鏡手術」で行なっています。肩関節、肘関節、膝関節、足関節、股関節の関節鏡手術に対して、毎年専門的なトレーニングを継続し、新しい技術を更新習得しているスポーツ医学科医師が対応しています。

さて、ここまではスポーツ医学科の得意なスポーツ整形外科の診療や関節鏡手術について述べました。では、どのような疾患の方が整形外科を受診するべきでしょうか?
まず一つが、高所からの落下や交通事故などの強い外力で受傷して骨折してしまった場合です。整形外科の外傷チームは骨折治療のスペシャリストですので、こういった複雑な骨折の場合は整形外科の受診をお勧めします。さらに、慢性的に関節が痛く、関節が変形してしまったリウマチ疾患の方やご高齢の方なども整形外科の受診をお勧めすることが多いです。このように関節の変形が強くなってしまうと、関節鏡での手術の適応にならない場合が多く、整形外科の人工関節チームで人工関節手術をしていただくことになります。また、骨や軟部組織の腫瘍をお持ちの方も整形外科受診をお勧めいたします。当院整形外科には腫瘍専門医がおりますので高度な治療が可能です。

今回はスポーツ医学科と整形外科どちらを受診するべきかわからない方のために、この2つの科の専門分野の違いについて書かせていただきました。しかし、これでも実際に受診される際にどちらの科にかかるのがよいかわからないという場合も多いと思います。その際は、スポーツ医学科でも整形外科どちらでも受診して頂けましたら、我々が連携して必要であれば専門の科に紹介させていただきますのでご安心ください。

スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法