スポーツ医学とは2

前回、「スポーツ医学」といっても何もスポーツ選手に限ったものではなく、スポーツをやっていない方の治療にも非常に役立つ整形外科の一専門分野である、ということをお話しいたしました。そこで、今回はいよいよ「スポーツ選手を対象にしたスポーツ医学」についてお話したいと思います。

スポーツ選手の定義

「スポーツ選手」とひと口に言っても、様々なレベルの方が含まれます。まず代表的なのは、プロの選手やオリンピック選手のような「トップレベル」の選手。次いで「競技レベル」の選手です。これには大学の体育会、中学の部活動、地域のクラブチームなどが含まれます。もう一つは、いわゆる「レクリエーショナルレベル」です。毎朝ジョギングをする、もしくは週末にテニスを楽しむ、などといった方です。ちなみに、週末にここぞとばかり運動しまくる人のことを英語では"weekend warrior(週末の戦士)"と呼びます。これらいずれの方も「スポーツ選手」には変わりありません。

スポーツ選手を対象にしたスポーツ医学とは?

スポーツ選手に起こる障害例の一つに、野球のピッチングやテニスのサーブの繰り返しなどオーバーヘッドのスポーツによる、肩関節の袋(関節包といいます)の障害に伴う二次的な硬さがあります。これは放置するとどんどん硬さが悪化し、肩関節(ボールと受け皿の構造)のボールの部分が受け皿の上方へと押し上げられて、軟骨や腱板という筋肉を痛めてしまうことが知られています。(これをinternal impingmentと呼びます)スポーツ医学科では、肩関節の動きを厳密にチェックし、こういった状態をより早期に診断し、運動療法などの手術でない方法で治療していきます。

また別の障害例として、長距離のランニングをする陸上やサッカー選手に多い「シンスプリント」があります。これはすねの骨の内側に沿って痛みが出るのですが、足首を曲げ伸ばしする筋肉がこの箇所についており、これらの筋肉の柔軟性が少ないために足首を上下する際にひっぱられて炎症を起こすと言われています。このような場合、ランニングフォームのチェックや筋の柔軟性を高めることで症状は改善されますが、診断すらされていない選手が多くいます。また、逆にシンスプリントと思って病院に来たら、実は疲労骨折だったという選手も数多く経験しています。やはり、正しい診断のためにも、スポーツ専門医による診察をお勧めいたします。今回ご紹介したような障害がいわゆるスポーツ選手に多い障害で、こういった障害を治療するのが、「スポーツ医学科」なのです。

7月1日、「スポーツ医学科」が新設されます!

整形外科の中でスポーツ専門医が中心となり、7月1日から「スポーツ医学科」という新たな診療科が誕生します。これに伴い、スポーツ医学的な最先端の技術や知識を用いて、(スポーツ選手であるなしにかかわらず)体の運動機能を改善したいという方の治療を積極的に行っていきます。また、万が一手術が必要な状態の方に対しては、身体への負担が非常に少ない「関節鏡手術」にて治療可能なことがほとんどです。この手術は約5?の傷からカメラを関節に挿入し行うもので、お仕事やスポーツへの復帰が従来の手術に比較してきわめて早いことで注目を集めています。こういった手術をご希望の方も是非、「スポーツ医学科」を受診ください。

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スキーモーグルの上村愛子選手が優勝した世界選手権で、大内医師は日本代表のチームドクターを務めた。

スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法