スポーツ医学とは?

よく、「スポーツ医学とはどういったものですか?」と尋ねられることがありますが、何も部活などスポーツをしている学生やクラブチームに所属しているアスリートの方に限った医療の話ではありません。例えば、会社員の方や主婦の方であっても運動器(※)の障害のために仕事の効率が下がることはよくあります。今回はそうした「スポーツ選手でない方を対象にした」スポーツ医学について、われわれ専門医がどのようにサポートしているのか事例を挙げてご紹介したいと思います。

※運動器:身体を構成し、支え、身体運動を可能にする器管。身体の支柱である全身の骨格と関節、それらに結合する骨格筋、腱及び靭帯のこと。

こんな症状でお困りではないですか?

主婦の方などで、布団の上げ下ろしの際に肩を痛めてしまい、以後同様の動作がつらくなったという方はおられませんか?30歳を過ぎると人間だれでも肩にある腱板という筋肉の質が悪くなります。本来の瑞々しくて弾力性のある腱板組織から、みずっけのないパサパサした(これを「変性した」状態と言います)腱板組織に置き換わってきます。この状態に加えて背筋が弱くなるなど他の要素が加わってくると、いよいよこの腱板に切れ目が入りやすくなります。そして突然症状が発生する典型的な例が、布団の上げ下ろしの際です。背筋が弱くなっているために肩甲骨が前に傾いている、その状態で脇を開いた状態で重い布団を持ち上げると腱板がピーンと張った状態で骨と骨の間に挟まり、簡単に切れてしまうのです。

また、膝の曲げ伸ばしをしようとすると痛みやひっかかりを感じるという方はいませんか?膝に多い半月板損傷とは、ふとももとすねの骨の間にある半月板という軟骨のクッションが、(これも変性のために)傷んでしまう状態です。そこに正座をしたり、和式のトイレを使用するなどの深い屈伸動作が加わり、軟骨が切れてしまうのです。そして、その切れっぱしが膝の筋力不足により頻繁にひっかかり症状を引き起こします。

治療法

このような疾患でお困りの方に対して、スポーツ医学ではまず「運動療法」を行います。
肩の例でいえば、損傷していない腱板の箇所をきちんと診断し、これらを活用できるように筋力トレーニングを行い、上部体幹の姿勢を改善するために股関節や背骨の関節の動きを改善します。また膝の例では、半月板のひっかかりが起こりにくくなるよう、膝関節を安定させることに重点をおきます。これには大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力強化を行います。また足首や足底の問題のために歩行そのものに問題があればそちらから治療することもあります。

ところが、不幸にしてこういった保存的な治療では症状の改善が得られない場合もあります。そうした場合は、俗に「かぎあな手術」とよばれている関節鏡手術を行います。これは約5?程度の小さな皮膚の切開から内視鏡を関節内に入れて、これにより映し出された画面を見ながら別の小さな穴から挿入した器械で手術を行うというものです。関節鏡手術は非常に身体への負担が少なく、スポーツやお仕事への復帰が早いことで最近注目を集めています。スポーツ医学を専門にしている整形外科医はこの手術を得意としております。

スポーツ医学科の立ち上げ

7月1日から単独の診療科として「スポーツ医学科」が開設予定です。担当医師は整形外科に所属している大内、後藤医師で、診察時間は午後2時〜6時(最終受付)を予定しております。今回ご紹介したような症状でお困りの方はぜひご活用ください。

スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法