全国的な設定におけるBNT162b2mRNACovid-19ワクチンの安全性(イスラエルからの報告)

イスラエルよりリアルワールドにおけるファイザーワクチンの大規模な安全性報告が出ました。
結論としては、特に心筋炎のリスクが有意に増える(10万人あたり2.7イベント)ことについては注意が必要ですが、ほとんどの有害事象のリスク上昇とは関連しておらず、リアルワールドにおける安全性が示されたと考えられます。
ワクチン未接種で新型コロナウイルス感染症に罹患する方が、ワクチンの有害事象(心筋炎含む)よりもより重篤な病態になる可能性があります。

全国的な設定におけるBNT162b2mRNACovid-19ワクチンの安全性
Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting.
N Engl J Med. 2021 Aug 25:NEJMoa2110475.
doi: 10.1056/NEJMoa2110475.

リアルワールドにおけるBNT162b2mRNAワクチンの安全性を評価するために、この研究は行われました。

イスラエル最大の医療組織のデータを使用して、BNT162b2mRNAワクチンの安全性が評価されました。
有害事象ごとに、その事象の事前診断を受けていない人の集団で、社会人口統計学的および臨床的変数に従って、ワクチン接種を受けた人とワクチン接種を受けていない人を個別にマッチさせました。

カプランマイヤー推定を使用して、ワクチン接種後42日でのリスク比とリスク差を算出されました。
SARS-CoV-2に感染した人と感染していない人をマッチングさせて、同じ有害事象に関する同様の分析が行われました。

ワクチン接種群と対照群にはそれぞれ平均884,828人が含まれていました。
ワクチン接種は、次の事象と強く関連していました:心筋炎(リスク比、3.24; 95%信頼区間[CI]、1.55〜12.44;リスク差、100,000人あたり2.7イベント; 95%CI、1.0〜4.6)、リンパ節腫脹(リスク比、2.43; 95%CI、2.05〜2.78;リスク差、100,000人あたり78.4イベント; 95%CI、64.1〜89.3)、虫垂炎(リスク比、1.40; 95%CI、1.02〜2.01;リスク差 イベント100,000人あたり5.0イベント; 95%CI、0.3〜9.9)、およびヘルペス帯状疱疹感染(リスク比、1.43; 95%CI、1.20〜1.73;リスク差、100,000人あたり15.8イベント; 95%CI、8.2〜24.2)。

SARS-CoV-2感染は、心筋炎のリスクの大幅な増加(リスク比、18.28; 95%CI、3.95〜25.12;リスク差、100,000人あたり11.0イベント、95%CI、5.6〜15.8)およびさらに重篤な有害事象のリスク(心膜炎、不整脈、深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、頭蓋内出血、血小板減少症などの有害事象)と関連していました。

結論としては、全国的な集団予防接種の設定でのこの研究では、BNT162b2ワクチンは調査されたほとんどの有害事象のリスク上昇とは関連していませんでした。
ワクチン接種はは心筋炎のリスク増加と関連していました(10万人あたり1から5イベント)。
この潜在的に重篤な有害事象および他の多くの重篤な有害事象のリスクは、SARS-CoV-2感染後に大幅に増加しました。

心筋炎については、厚生労働省のHPにも記載されておりますが、軽症の場合が多く、循環器の通常の診療体制で対応可能です。
心筋炎や心膜炎のリスクはあるとしても、ワクチン接種のメリットの方がはるかに大きいと考えられています。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患