卒業生(研修プログラム修了生)インタビュー 栃木

栃木健太郎
(現 鹿児島生協病院 内科(2017年卒))

1. これまでの経歴を簡単に教えてください
鹿児島市の桜ヶ丘という町で生まれ、家から徒歩1分の小学校に通い、中高は少し離れた市内の学校に出たものの、大学は桜ヶ丘にある鹿児島大学医学部に入学しました。せまい環境とも思わず、このまま育ってきた地域に根差す医療を行い、地元に貢献することを目標にしていました。それから市内の鹿児島生協病院という病院で初期研修をはじめ、毎日わからないことだらけで挫折を味わいながら空回りばかりの研修をしていました。「これはいかん」と3~5年目も同病院で研修延長という名の総合診療を行い、集中治療から小児まで幅広い内科のベースを築きました。

2. 当科での研修を選んだ理由、きっかけを教えてください。
専門科選択にかなり悩みましたが、総合診療で出会うことの多かった呼吸器疾患の面白さ、奥深さに気づき、呼吸器内科の道に進みたいと思うようになりました。そんな中、偶然書店で手に取った中島啓先生の「呼吸器診療最適解」と出会い、エビデンスと臨床の融合が亀田にあるのではないかと呼吸器道場の門を叩くことになりました。それと、地元を離れて関東の都会生活を経験したいという田舎者心がくすぐられたというのもあります。鴨川の田園風景に打ちひしがれましたが…。

3. 当科での研修で学びになったことはありますか?研修環境はいかがでしたか?
非常に多くのことを学んだと思います。知識やテクニックは呼吸器内科チームのみんなから盗みまくりました。自分は教科書を読んでも理解が上滑りになりがちで、あまり頭に残らないタイプでしたので、目の前の患者さんに集中して診療の中で勉強させていただきました。初期の頃は患者さんに不安に思われたかもしれませんが、責任をもって教科書や文献で情報を集め、カンファやエキスパートの先生方に個別に相談したりして答えを捻り出していきました。そしてその答えを捻り出す姿勢こそがこの研修で一番学び得たものだと思います。
研修環境はとても充実していました。特にカンファレンスは平日の朝夕毎日行われ、質の高い議論が行われます。そこでの耳学問から関連文献を探し、周辺知識を身に着けるというのを繰り返すだけでもかなり力になったと思います。カンファは教育的カンファを基本とし、心理的安全性にも配慮されており、真面目な場ですが、笑いもよく起こります。ただ、医員はみな本気なのでわかりにくいプレゼンだったり誤魔化したりすると鋭い意見が飛びます。かく言う自分も自信がない部分のプレゼンが曖昧になり突っ込まれた経験も多々あります。承認を求めるプレゼンなのか、わからない部分を相談したいプレゼンなのか、その使い分けも学びになりました。

4. 研修で大変だったことはありましたか?どのように対処されましたか?
大変なことはたくさんありました。呼吸器診療はcase by caseで判断することが非常に多く、明確な答えを求めがちな自分は悩んでばかりでした。時間のない外来中でも悩んでIpadで調べ始めてしまい、「こんなんで大丈夫なのか」と自信を無くすことも多かったです。ただ、先に述べた通り、答えを捻り出す姿勢こそが重要であり、それを上級医の伊藤博之先生が「泥にまみれろ」と表現され、この診療スタイルは間違いではないのだと励まされたことを思い出します。このような熱い話を近所の居酒屋や居残った談話室で繰り広げながら日々を乗り越えていきました。

5. 現在の仕事にどう活きていますか?
やはり、泥にまみれる姿勢と思います。現在は、試行錯誤しても解決しないときは自分の限界を認め、他職種含め仲間をも泥に引きずり込むことを覚えました。スタッフや仲間の頼り方を覚えたということにしています(笑)。
また、エビデンスとの向き合い方が少しうまくなったと思います。エビデンスの確立した診療は難しくありません(最初はそれすらも危うかったですが)。しかし、エビデンスの乏しい領域、エビデンスを適応できない症例でどう闘うかが問題です。nの少ない文献でも有効なデータがあるだけましと試してみたり、エキスパートの意見を参考にしたり、時にはオリジナルな対応(もちろんdo no harmが原則)も捻り出す姿勢が身についたと思います。その姿勢は亀田での勉強会や研究、学会発表での文献学習を通して培ったものと思います。今ではガイドラインの「弱く推奨する」のニュアンスもわかるようになった気がします(笑)。答えのない領域で最適解を探し続ける姿勢が自分の臨床医としての根幹となりました。

6. 当科(あるいは貴院)での研修・勤務を検討する人へのメッセージ
亀田総合病院の呼吸器内科は、多くの臨床経験が得られる環境でもあり、最先端の医療を追い求めエビデンスを創出するチームでもあります。自分は臨床メインの人間ですが、研究を通して各分野のフロンティアを知り、さらにフロンティアを前進させる経験が臨床力に深みを出すと信じています。このチームは臨床も研究も、そして教育にも力を入れています。研修の環境としてはこの上ないと思います。まずはぜひ見学に来て意外とアットホームな感じも味わって入職を検討してみてください。

7. 今後の抱負や将来像中長期的な目標
現在は高齢の父の医院を手伝いながら、メインは鹿児島生協病院でベテランの先生2人と呼吸器内科医として診療しています。学んだものを持ち帰り、地元鹿児島の医療を盛り上げていきたいと思っています。まずは地道に目の前の患者さんに対して共に悩み、あれこれと文献をあさりながら解決策らしいものを作り出す泥だらけの日々を大切にし、その先に地域を牽引する呼吸器内科のリーダーを目指したいと思っています。それには臨床だけでなく、学術的な活動や仲間探しが必要で、まだまだ将来を模索する日々が続きそうです。


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