喫煙歴20pack-yearsの患者の20%がCOPDである

慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)はタバコを主とする有害物質を吸入することで発症する呼吸器疾患です。
世界各国のCOPDの有病率調査では、10%前後とする報告が多く、2004年のWHO(世界保険機構)調査では、COPDは死因の第4位(総死亡の5.1%)[1]です。
2,000年に日本で行われたNICE study(Nippon COPD Epidemiology Study)では、FEV1.0/FVC<70%をCOPDと定義して集計したところ、40歳以上の日本人の8.6%(530万人) COPDに罹患していると考えられ、世界の国々と同程度の高い有病率であることが明らかにされました[2]。
一方、気流閉塞が認められた被験者のなかで、すでにCOPDと診断されていたのは9.4%に過ぎず、多くのCOPD患者が見過ごされている現状が浮き彫りにされました。
喫煙の量を示す国際的な指標として、喫煙指数 Pack-yearsがあります。
Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数という計算法です。
すなわち「1日のタバコの箱数×年数」という意味です。
統計上は、COPD患者の90%に喫煙歴があり、COPDの発症率は20pack-yearsの喫煙者では19%(約20%)[3]、60pack-years以上の重喫煙者では約70%[4]になります。
クリニカルパールとしては、記憶しやすいように「喫煙歴20pack-yearsの患者の20%がCOPDである」と覚えておきましょう。
呼吸困難で外来を受診した患者さんには、必ず喫煙歴を確認し、特に20pack-yearsを超えていれば、「目の前の患者さんは少なくとも20%の確率でCOPDがある」と考え、積極的に呼吸機能検査を行って欲しいと思います。
1. Organization WH The global burden of disease:2004 update Genova, WHO Press 2008
2.Fukuchi Y, Nishimura M, Ichinose M, Adachi M, Nagai A, Kuriyama T, et al. Copd in japan: The nippon copd epidemiology study. Respirology. 2004;9:458-65.
3.Cigarette smoking and health. American thoracic society. American journal of respiratory and critical care medicine. 1996;153:861-5.
4.日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版作成委員会. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版. 日本呼吸器学会 2013.
このサイトの監修者
亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓
【専門分野】
呼吸器疾患