vol.37 「世界疼痛学会(IASP)が開催」
今週9/26から横浜で世界疼痛学会(IASP)が開催中です。NYのBeth Israel病院時代の先輩Dr. David Lussierと12年ぶりに再会しました。当科から薬剤部の協力を得て「A rapid increase in tramadol use represents a proportional decline in strong opioid consumption: Is this a nationwide phenomenon in Japan?」と題したポスター演題を発表しました。
概要
当院で疼痛・緩和ケアを病院を挙げて推進してきた結果、強オピオイド消費量は過去10年間順調に右肩上がりだった。しかし最近数年間は減少に転じており、その理由が分からない。私どもが立てた仮説は、強オピオイド処方量の減少分は、トラマドールの処方に置き換わっている、というもの。実際にトラマドールの処方量を調べると、2010年にトラマドール経口剤が販売開始となって以来、年々同薬の使用量が着実に増加。同薬の総使用量はオピオイド総使用量の約1/3に達していた。これは強オピオイドの減少分をも上回り、結局、強オピオイドとトラマドールを合計すると、当院におけるオピオイド総使用量は現在も増加傾向であることが確認できた。日本のオピオイド統計でも2009年から2012年の3年間にオピオイド消費量は約10%減少しており、この理由として妥当性のある説明はなされていない。当院の統計結果を踏まえると、日本全体のオピオイド統計にトラマドール使用量が加わると、オピオイド総使用量は当院の統計と同様に実際には増加傾向になるのでは、という推測も成り立ちます。日本での統計解析ついては今後の調査を待ちたいと思います。(演題番号PT300)
(関根)
このサイトの監修者
亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一
【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和