【活動報告】アウトリーチ活動

報告が遅くなりました。
9月のアウトリーチ活動の報告です。
9月もスタッフのストレスマネジメントがテーマでした。

実際に医療ミスをしてしまった...時のスタッフへの対応(患者さん、家族にはもちろん誠意を持って対応します)について考えました。(架空症例です。今回も長い投稿です。)

架空症例:78歳 男性
入院病名:くも膜下出血後遺症 全失語 嚥下障害
併存症:高血圧
既往歴:糖尿病 (現在内服なし)
内服:ディオバン40mg(降圧剤)粉砕懸濁 
胃瘻から人工栄養(半固形型注入)

数年前にくも膜下出血後後遺症で入院。入院当初はわずかながら手足も動かすことができ、かろうじて傾向摂取できていたが、徐々に嚥下が難しくなり3年前に胃瘻となっている。四肢も拘縮しており、寝たきりの状態。呼びかけにうなずきや首振りで答えるが、言葉は出ない。降圧薬を飲まないと収縮期血圧:170mmHg台まで上昇してしまう(飲めば130ー140mmHg程度)ため、懸濁でディオバンを投与している。
昼食前の清拭時、代簿賭に反応なく、普段と様子が違っていたため看護助手がナースに連絡した。血圧:162/95mmHg、SpO2:96%(室内気)、呼吸数12回/分、末梢は冷たく、じっとりと汗をかいている。血糖値を測定したところ35mg/dLと著しい低血糖を認めたため速やかに医師へ連絡し、50%ブドウ糖20mL/Aを2A静注を施行したところ、10分後には呼びかけに反応可能となった。
急な低血糖の原因を病棟をあげて検索したところ、名字が同じ他患の薬剤(ディオバン40mg+ジャヌビア100mg 粉砕懸濁)と朝食後の薬剤の取り違えがあったことが判明した。ジャヌビアを飲まなかった他患の血糖値は緩徐に上昇していたが昏睡状態に至るほどの高血糖ではなかったため、取り違えに気づかなかった。

ここで考えてみよう!!

  • この状態はどのように防げたか?発生した時に各担当者は何ができたか?
  • この状況を各担当者はどう捉えることができるか?
  • この状況に対応したスタッフ(看護助手・看護師)に対し他のスタッフはどう接することができるか?

みなさんでしたらどのように声をかけますか?
今回もグループ毎にいろいろな意見が出ました。(ここでは割愛します)
あくまでも医療者側のサポートとして考えております。(患者さん、ご家族には十分な説明と対応を行いますが、今回はその対応についてではありません)
「犯人捜し」「原因を追及する」をするのではなく、どのように情報を取っていくのか、がキーポイントです。はじめから「犯人捜し」「原因追及」をしてしまう人は、自分のこととして考えていないことになります。このことに気づくことが大切です。

まず、いつもと違う患者さんの様子に気づき、報告してくれたことが重要であることをスタッフに伝えます。→普段の患者さんの様子をしっかり観察していたからこそ違いに気づけたことを伝えることが大切です。
その上で、対応策をみんなで検討をしていきます。
「私かもしれない・・・」と上司に報告をしてくれたスタッフがいた場合、上司はどのように部下に声をかけますか?
まずは「伝えてくれてありがとう」「一人で抱えていてつらかったね」など相手の立場に立って言葉をかけるとよいかもしれません。
スタッフに謝る機会を持つことと、これからのことを考える機会を持つことは分けて考えることが必要です。
また、スタッフ同士が声をかける場合、自分だったらと考えると、不安、恐怖の感覚を抱くこともあると思います。そんなことを考えながら、安易に声をかけるのではなく、見守ることも必要かもしれません。
どんなに対策をたててもミスを起こすことはあります。そのときに、次につなげられるように、自分のこととして考え対策をしていくことが必要かもしれません。
今回は様々な対策まで話すことができました。参加者が当事者の立場、また、上司の立場・・・それぞれの立場に立って考える時間となりました。
次回はどのような勉強会になるか・・・。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
疼痛・緩和ケア科部長 関根 龍一

【専門分野】
病状の進行した(末期に限らない)癌や癌以外のあらゆる疾患による難しい痛みのコントロール、それ以外の症状の緩和