第7回日本産科婦人科遺伝診療学会学術講演会に参加して

2021年12月17、18日に大阪で開催された第7回日本産科婦人科遺伝診療学会に樋口、松浦の2人が参加してきました〜(^O^)/
いつもこのブログを通じて当科の学会活動報告もかねて学会の楽しさをアピールしてきましたが、まさかまさかの約2年ぶりの学会ネタ投稿です〜(;・∀・) 2020年に入ってからはコロナ禍の影響でほぼ全ての学会がオンライン開催となってしまいました。最近ではとても楽しみにしていた横浜開催のAPAGE2021(アジア婦人科内視鏡学会)や当院主催で開催した日本女性骨盤底手術学会や日本肉腫学会などもあったのに・・・(´;ω;`)ウゥゥ でも今年に入ってからは徐々にWEBと現地開催のコンバインド開催となり、少しコロナも落ち着いているようなので今回は口演発表が現地開催となり、久しぶりに会場参加させて頂きました(*^▽^*)

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(学会場にて・・・看板なかったので他の学会のポスター前でパチリ・・・)

今回参加した学会はその名の通り産婦人科が中心となった遺伝診療に関する学会です。実は近年産婦人科における遺伝診療のニーズは急増しており、特に婦人科腫瘍の分野では2020年4月より遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の診断目的のBRCA1/2遺伝学的検査、サーベイランス、予防手術が保険適応となり、まだまだ課題は多いものの少しずつHBOC患者さまの診療負担が軽減されてきています。
2021年1月にはmyChoice診断システムが保険適応となり、進行卵巣癌患者さんはほぼ全例、維持療法の層別化のためにDNA修復におけるHRD(相同組み換え修復異常)だけでなく、がん組織のBRCA1/2遺伝子を調べることになり当院では臨床遺伝科、婦人科、病理科、検査部が協力し、5月には実施可能な体制を整えました。
さらに2021年1月には大腸がんの初回治療時におけるマイクロサテライト不安定性検査も保険適応拡大となり、今後Lynch症候群の診断へと結びつく患者さまも増えれば子宮体癌を治療する我々にとってもサーベイランスやリスク低減手術の対策も講じる必要がでてきます。
また産科診療においてはNIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)のカウンセリング、検査体制などを巡って混沌とした状態が続いてしまっており、課題解決にむけた努力の1つとして検査実施のための学会認定資格制度が始まり、当科でも3名(末光、門岡、三谷)の医師がその資格を有しています。

そして今回は専攻医の樋口医師が当科で経験したCowden症候群の卵巣癌治療例について発表しました。Cowden症候群は遺伝性腫瘍の1つで大腸がん、乳がん、子宮体がん、甲状腺がんなどの発症リスクが高まりますが、卵巣がん診断例はまだ世界的にも3例しかなく、また今回我々が経験した卵巣がんの組織型では初の報告でした。臨床遺伝科の協力なければ診断は困難であり、患者さま、ご家族様はもちろん遺伝カウンセラー、そして臨床遺伝科と共同研究を行って頂いている東京医科歯科大学遺伝子診療科の吉田教授、高嶺認定遺伝カウンセラーにはこの場を借りて感謝したいと思いますm(__)m
今回発表した樋口医師は初期研修を当院で修了後、昭和大学医学部産婦人科学教室に入局、その後昭和大学横浜北部病院、藤が丘病院、茨城県立中央病院での研修を終え、3年目に自らが希望し、ローテートで1年だけですが当院に戻ってきてくれました(*^▽^*)
この報告はすでに論文がacceptされたので近日中にPubmedでもabstractが読めるようになると思います(・∀・)! 学会発表では終わらず、論文発表することで患者さんとそのご家族の協力を無駄にせず、より一層医学の進歩に貢献していくことができます。そしてこれからずっとHiguchiらの報告として、形が残るというのは一臨床医だけでなく科学者でもある、素晴らしいことですね(*^▽^*) 学会発表だけでなく論文発表も無事に終え、これで来年度の専門医試験の一次審査の準備が整いました。あとは書類を提出して、しっかり勉強して試験に臨むのみです(*'▽') がんばりましょ〜(^O^)/

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(発表する樋口医師、専攻医とは思えないほど立派に質疑応答にも答えてました!)

P.S. ちなみに学会後は2人で串カツを頂きました。本当に日常が戻るまで、感染拡大抑止に十分な配慮をしながら、学会活動も継続していきたいと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
産婦人科主任部長 大塚 伊佐夫

【専門分野】
婦人科悪性腫瘍