MCD(微小変化群)/FSGS(巣状分節性糸球体硬化症)の臨床及び病理学的に重要なパール

最近ネフローゼ症候群が入院となりましたので、鑑別で重要となるMCD(微小変化群)/FSGS(巣状分節性糸球体硬化症)の臨床及び病理学的に重要なパールについてまとめたいと思います。

臨床的には、FSGSは血圧がやや高いことが多いです。MCDのみで血圧が高くなることはあまりないです。
臨床経過は、膜性腎症よりは早いですが、MCDよりFSGSの方がやや緩徐な印象です。MCDは、発症日がわかることが多いです。
またネフローゼ症候群でないFSGSは、いわゆる液性因子が原因ではないです。緩徐な経過でネフローゼ症候群になるFSGSで、若い患者様は遺伝病を考える必要があります。一部はミトコンドリア病でCOQ10が効くことがありますので、病理診断をする際に注意が必要です。ネフローゼ症候群でない場合は、adaptive FSGS(代表例は肥満関連や低出生体重)のことが多いです。
病理学的には、FSGSはfocalですのでサンプリングエラーが起き得ます。昔の論文で20個近く必要という報告がありますが、個人的には10個近くあれば診断がつくことが多いと思います。加えて、若い患者様で尿細管萎縮/間質線維化が目立つ、または尿細管上皮上皮細胞にfoam cellがある場合は、FSGS病変が隠れている可能性があり、FSGS病変がないか丹念にみることや、場合によってはパラフィン切片をdeep cutし、評価することが重要です。
治療に関しては、MCDは、頻回再発の場合はこれまではカルシニュリン阻害薬をよく使用してきましたが、MCDの一部は、ポドサイトのネフリンに対する抗体が原因であることが最近報告され、自己抗体病であるため、リツキシマブが効果的です。FSGSは、リツキシマブが効く可能性もありますが、初期治療は、ステロイドに加えて、カルシニュリン阻害薬を使用することが多く、脂質異常に対してスタチンを必ず併用し、しばらく継続します。場合によっては、LDLapheresisも検討します。(私見も含みますので、一部でも参考になれば幸いです。)

このサイトの監修者

亀田総合病院
腎臓高血圧内科部長 鈴木 智

【専門分野】
腎疾患全般、特に腎炎、腎病理