New Surviving Sepsis Guidelines 感染その3

post69.pngその他の感染症関連の推奨

抗菌薬の投与量の最適化、感染源の管理、抗菌薬投与期間の決定などに関する推奨事項が示されたが2016年からの大きな変更はない。

推奨25 弱い、中等度 成人の敗血症や敗血症性ショック患者に対しては、従来のボーラス投与よりも、(初回ボーラス投与の後に)維持のためにβ-ラクタム薬を長時間投与することを提案する。
推奨26 BPS
BPS 
成人の敗血症や敗血症性ショック患者に対しては、一般に認められているPK/PD(pharmacokinetic/pharmacodynamic)の原則と薬剤の特性に基づいて、抗菌薬の投与方法を最適化することを推奨する。
推奨27 BPS
BPS 
成人の敗血症または敗血症性ショックに対しては、医学的にも人的・設備的にも実行可能になり次第すみやかに,緊急の感染ソースコントロールを必要とする感染症の特定の解剖学的診断を同定または除外し、必要な感染ソースコントロールを実施することを推奨する。
推奨28 BPS
BPS 
敗血症や敗血症性ショックの成人に対しては、他の血管内アクセスが確立された後、敗血症や敗血症性ショックの原因となりうる血管内アクセスを速やかに除去することを推奨する。
推奨29 弱い、非常に低い 成人の敗血症または敗血症性ショック患者に対しては、抗菌薬の投与期間を固定しde-escalationの再評価を毎日行わない方法よりも、抗菌薬のde-escalationの評価を毎日行うことを提案する。
推奨30 弱い、非常に低い 成人で敗血症または敗血症性ショックの初期診断を受け、感染ソースコントロールが十分に行われている患者に対しては、抗菌薬の投与期間を長くするよりも短くすることを提案する。
推奨31 弱い、低い 敗血症または敗血症性ショックの初期診断を受け、感染源の管理が十分であり、最適な治療期間が不明な成人に対しては、臨床評価のみではなく、プロカルシトニンと臨床評価を用いて抗菌薬の中止時期を決定することを提案する。

Extended infusionに関しては2つのメタ解析では従来のボーラス投与と比べて短期死亡の低下(RR 0.70、95%CI 0.57-0.87)が示唆されている[1, 2]。実施に当たっては、静脈カテーテルを占拠すること、抗菌薬やその他の薬剤が同一ルートから流れたときの相互作用、薬剤の安定性を考慮することが重要である。

感染源のソースコントロールが重要であることは言うまでもないが、血管内デバイスをいつ除去するかは悩ましい場面が多くある。例えばCRBSIを考慮しているがまだわからず、敗血症とは言えないときなどである。今回のガイドラインの推奨のように敗血症であることや敗血症性ショックだと分かっていれば抜去するのは理にかなっている。これをサポートするエビデンスは実は少なく、関連するRCTが1件[3]、観察研究が2件で[4, 5]、死亡に差があるという証拠はない。Bartらは血行動態が安定しており、カテーテル関連感染が疑われるが、菌血症が証明されておらず、挿入部位の感染もなく、血管内異物もない患者64名を対象に、標準治療群(すべてのCVCを計画通りに変更)と経過観察群(後に菌血症が確認されたり、血行動態が不安定になった場合にCVCを変更)を比較して、発熱の解消、CRP、SOFAスコア、ICU滞在期間、ICU死亡率に有意差はなかったとしている[3]。しかし、この研究はサンプル不足であった。これらの研究は、適応による交絡のリスクや不正確さなどのリミテーションがありエビデンスの質は非常に低いとなっている。この分野に関してはさらなる研究が必要に思う。

プロカルシトニンに関してはガイドライン作成班内でメタ解析が行われており、プロカルシトニンを用いて管理した患者の死亡が対照群に比べて改善したことが示唆されたが(RR 0.89、95%CI 0.80-0.99)、ICUや病院での滞在期間には影響がなかった。抗菌薬を中止する時期を決定するために、臨床評価とともにプロカルシトニンを使用することの望ましくない影響は最小限であり、潜在的な利益を上回るものではないと考えられ、今回のような推奨になっている。ルーチンに使用するのではなく、標準的治療期間が存在しない感染症や、複雑な症例に限定して使用するのが良いと思われる。

1. Roberts JA, Abdul-Aziz M-H, Davis JS, et al. Continuous versus Intermittent β-Lactam Infusion in Severe Sepsis. A Meta-analysis of Individual Patient Data from Randomized Trials. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. 2016;194(6):681-91.
2. Vardakas KZ, Voulgaris GL, Maliaros A, Samonis G, Falagas ME. Prolonged versus short-term intravenous infusion of antipseudomonal β-lactams for patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis of randomised trials. The Lancet Infectious Diseases. 2018;18(1):108-20.
3. Rijnders BJ, Peetermans WE, Verwaest C, Wilmer A, Wijngaerden EV. Watchful waiting versus immediate catheter removal in ICU patients with suspected catheter-related infection: a randomized trial. Intensive Care Medicine. 2004;30(6):1073-80.
4. Garnacho-Montero J, Aldabó-Pallás T, Palomar-Martínez M, et al. Risk factors and prognosis of catheter-related bloodstream infection in critically ill patients: a multicenter study. Intensive Care Medicine. 2008;34(12):2185-93.
5. Lorente L, Martín MM, Vidal P, Rebollo S, Ostabal MI, Solé-Violán J. Should central venous catheter be systematically removed in patients with suspected catheter related infection? Critical Care. 2014;18(5).


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学