New Surviving Sepsis Guidelines 感染その2

抗菌薬選択

推奨16 弱い、非常に低 成人の敗血症や敗血症性ショックが疑われる患者の場合、臨床評価のみの場合と比較して、抗菌薬の投与開始時期の決定にプロカルシトニンを併用しないことを提案する。
推奨17 成人のMRSAのリスクが高い敗血症や敗血症性ショック患者に対して、MRSAをカバーしない抗菌薬の使用よりもMRSAをカバーする経験的抗菌薬の使用を推奨する。
推奨18 弱い、低い 成人のMRSAのリスクが低い敗血症や敗血症性ショック患者に対して、MRSAをカバーしない抗菌薬の使用と比較して、MRSAをカバーする経験的抗菌薬の使用しないことを提案する。
推奨19 弱い、非常に低 成人の敗血症や敗血症性ショック患者で、多剤耐性(MDR)菌のリスクが高い患者に対しては、グラム陰性菌をカバーする単剤の抗菌薬を投与することと比べて,経験的治療にグラム陰性菌をカバーする2種類の抗菌薬を使用することを提案する。
推奨20 弱い、非常に低 成人の敗血症や敗血症性ショック患者で、多剤耐性(MDR)菌のリスクが低い患者に対しては、グラム陰性菌をカバーする単剤の抗菌薬を投与することと比べて,経験的治療にグラム陰性菌をカバーする2種類の抗菌薬を使用しないことを提案する。
推奨21 弱い、非常に低 成人の敗血症や敗血症性ショック患者に対しては、原因となる病原体とその感受性が判明している場合には、グラム陰性菌を2重にカバーしないことを提案する。
推奨22 弱い、低い 成人の真菌感染症のリスクが高い敗血症や敗血症性ショック患者に対しては、抗真菌療法を行わないよりも、経験的な抗真菌療法を行うことを提案する。
推奨23 弱い、低い 真菌感染のリスクが低い成人の敗血症や敗血症性ショック患者に対しては、経験的に抗真菌治療を行わないことを提案する。
推奨24 推奨なし 抗ウイルス剤の使用については推奨を定めない。

微生物ごとにリスクに応じて抗菌薬投与

2016年のガイドラインでは抗菌薬選択の推奨は
「敗血症や敗血症性ショックを呈している患者に対して、すべての可能性のある病原体(細菌、潜在的には真菌やウイルスを含む)をカバーするために、1種類以上の抗菌薬による経験的な広域療法を推奨する(強い推奨、中等度のエビデンスの質)」
であった。
今回の改訂では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性菌グラム陰性菌、真菌、ウイルスとそれぞれ項立てされることになった。それぞれの対象で経験的抗菌薬投与を行うかどうかは、患者とその背景にあるリスク要因に基づいて決定することを提案している。例えば、多剤耐性菌のリスクが高い状況では、2種類の抗菌薬による経験的治療を行うこと、リスクが低い場合は単剤治療をおこなうことが推奨された。どちらもエビデンスの質が非常に低く、弱い推奨に分類されている。これは、RCTのメタアナリシスで、重症敗血症患者において、抗菌薬の単剤療法を受けた患者と併用療法を受けた患者を比較して、死亡やその他の患者中心のアウトカムに差がないことが示唆されているためである[9]。なお、多剤耐性GNRのリスクとは以下のようなものである。

過去1年以内に抗菌薬耐性菌による感染またはコロニー形成が証明
抗菌薬耐性菌の地域的な流行状況
院内/医療関連感染
過去90日以内の広域抗菌薬の使用
選択的消化器系除染(SDD)の同時使用
過去90日以内の高流行国への渡航(https://resistancemap.cddep.org/)
過去90日以内の海外での入院
など

真菌のリスクに関してはガイドラインのTable2にまとめられている。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学