New Surviving Sepsis Guidelines 感染その1

post67.pngInfection (感染)

2021年のガイドラインでの、大きな変更点は抗菌薬投与のタイミングである。

抗菌薬投与のタイミング

推奨11 成人の敗血症や敗血症性ショックが疑われるものの、感染が確定されていない患者に対しては、継続的に再評価を行い、代替診断を探し、代替となる原因が確定した場合や強く疑われる場合には経験的抗菌薬を中止することを推奨する。
推奨12 強い、低い(敗血症性ショック)強い、非常に低(ショックを伴わない敗血症) 成人の敗血症性ショックの可能性がある、あるいは敗血症の可能性が高い患者に対しては、直ちに、理想的には認識後1時間以内に抗菌薬を投与することを推奨する。
推奨13 成人のショックを伴わない敗血症の可能性がある患者に対しては、急性疾患の原因が感染性のものか非感染性のものかを迅速に評価することを推奨する。
備考
迅速な評価には、病歴、臨床検査、急性疾患の感染性および非感染性原因の検査、および敗血症と類似する可能性のある急性疾患の即時治療が含まれる。可能な限り、この評価は来院後3時間以内に行い、患者の症状の原因が感染性のものであるかどうかを判断し、敗血症の可能性が高いと思われる場合には、適時に抗菌治療を行うべきである。
推奨14 弱い、非常に低 成人のショックを伴わない敗血症の可能性のある患者に対しては、時間を限定して迅速な検査を行い、感染の懸念が残る場合には、敗血症が最初に認識された時点から3時間以内に抗菌薬を投与することを提案する。
推奨15 弱い、非常に低 成人の感染の可能性が低く、ショックを伴わない患者に対しては、注意深くモニタリングを続けながら抗菌薬の投与を延期することを提案する。

敗血症のリスクに応じて抗菌薬投与のタイミング決まる

SSCG2021では、敗血症性ショックの患者には1時間以内に、ショックを伴わない敗血症の可能性がある (possible)患者には3時間以内に抗生物質を投与することを推奨となった.これは、どちらの状況でも1時間以内の抗菌薬投与を推奨していた以前のガイドラインからの変更点のうちの1つである。
敗血症患者にタイムリーに抗菌薬を投与することが予後の改善に不可欠である。しかし、敗血症の診断には多くの場合、不確実性がある。つまり、初療の段階では、確実に敗血症といえる場合だけでなく、おそらく敗血症、敗血症の可能性がある、敗血症の可能性は低い、のようにその診断の確実性にもグラデーションがあるのである。また、短く厳格な時間内に抗菌薬投与を行うことを推奨するかどうかには、それによる様々な潜在的な害とのバランスを考慮しなければならない.すなわち、感染症ではない患者への抗菌薬の過剰投与、アレルギー、腎障害、血小板減少症、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症、抗菌剤耐性などである。また、忙しい救急部で確定診断に至るまでの時間が限られていること、抗菌薬のロジスティックな問題など実施上の問題も考慮する必要があった。
上記を踏まえた上で、今回のガイドラインでは、敗血症である可能性の確実性(おそらく敗血症: probable、可能性がある: possible、可能性が低い: Low)、で場合分けした抗菌薬の投与開始に関する指針を提案している。
敗血症が鑑別に挙がるからと言って即抗菌薬投与したり、一度敗血症と診断したからといって闇雲に抗菌薬治療を継続するプラクティスからはそろそろ脱却しなければならない。

図1 敗血症への抗菌薬投与のタイミング


[1]を改変して引用
敗血症の可能性とショックの有無に基づいて、抗菌薬投与のタイミングの推奨を層別化した(図1)。敗血症の可能性が高い患者、または敗血症の可能性や可能性に起因するショック状態にある患者に対しては、直ちに(理想的には認識後1時間以内に)抗菌薬を投与することを推奨する。敗血症の可能性があるがショック状態ではない患者に対しては、感染の可能性と非感染性疾患の可能性を迅速に評価することを推奨する。限られた時間内に迅速な調査を行っても感染の懸念が残る場合は、敗血症が最初に認識されてから3時間以内に抗菌薬を投与すべきである。感染の可能性が低く、ショック症状のない患者に対しては、抗菌薬の投与を延期し、患者の注意深い観察を続けることを提案する。

1.Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, Antonelli M, Coopersmith CM, French C, et al. Executive Summary: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for the Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Critical Care Medicine. 2021;49(11):1974-82.


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学