RECONNECT

【論文】
post4.jpgReconnection to mechanical ventilation for 1 h after a successful spontaneous breathing trial reduces reintubation in critically ill patients: a multicenter randomized controlled trial. Intensive Care Med. 2017 Nov;43(11):1660-1667. doi: 10.1007/s00134-017-4911-0. Epub 2017 Sep 22. PubMed PMID: 28936675.
Fernandez MM, González-Castro A, Magret M, Bouza MT, Ibañez M, García C,Balerdi B, Mas A, Arauzo V, Añón JM, Ruiz F, Ferreres J, Tomás R, Alabert M, Tizón AI, Altaba S, Llamas N, Fernandez R.

【Research Question】
重症の挿管患者に対しスタンダードケアに加えて抜管前に1時間休ませると、再挿管率が減るか

【わかっていること】
SBTは人工呼吸離脱ができるかを判断するのに広く使われている
SBTの方法やWeaning方法について多くの研究がされているがどれがよいかまだ結論はでていない1
横隔膜の疲労が抜管失敗につながる2
SBTで呼吸筋の疲労が生じる可能性がある3
SBTクリア後にSBT施行前の呼吸器設定に戻して休ませると、 Minute Ventilationの回復が早い4

【わかっていないこと】
SBT後に休息をすることで臨床的なアウトカムに影響をあたえるか

【仮説/目的】
重症の挿管患者に対しスタンダードケアに加えて抜管前に1時間休ませると、再挿管率が減る

【PICO】
P: 12時間以上、人工呼吸を装着している者
I:SBT成功後に一時間呼吸を休ませる
Inclusion Criteria: 人工呼吸器を装着して少なくとも12時間以上経過しており、 Criteria for assessing wean ability by SBTを満たす患者を毎日抽出
Exclusion Criteria:18歳未満、気管切開後、多量の呼吸器分泌物(直近の8時間で2回以上の吸痰が必要)、従命困難、DNR 、再挿管なしコード、プロトコルを逸脱した抜管、他の研究参加者、SBTで主に多呼吸が理由でNIV(noninvasive ventilation)の適応がある患者
C:休ませずそのまま抜管
O:48時間以内の再挿管割合

<Criteria for assessing wean ability>
主観的指標:挿管する理由となった疾患の急性期を脱したこと、充分な咳ができること、気管・気管支内の分泌物が多すぎないこと
客観的指標:HR <140 /min., sBP 90-160 mmHg (カテコラミンなし/もしくは少用量), 体温 <38℃, 意識レベル清明, SaO2 >90% ( FiO2 ? 0.4, PEEP <8 cmH2O), RR <35 /min, Minute volume <10 L/min, rapid shallow breathing index [f/VT ] <105 min/L)

【期間】2013年10月から2015年1月

【場所】スペインの17施設のICU

【デザイン】多施設オープンラベルRCT

  • 事前プロトコル  clinicaltrials.gov
  • ランダム化の方法:コンピューターによるブロックランダム化(サイズ4)、層別ランダム化(抜管失敗のリスク別に層別化)
    下記のうち、1項目でも満たす場合はハイリスクと定義される。
    65歳以上 、慢性心不全が理由で挿管した場合 、COPD (moderate or severe) 、APACHE II score:抜管日の時点で12点以上 、BMI > 30 、呼吸器感染による咳、過剰な呼吸分泌物(抜管前の8時間で2回以上の吸痰) 、呼吸器のweaningが難しく延期されているケース(もしくは1回以上失敗)
    2つ以上の合併症 、上気道関連の問題 、7日間以上の人工呼吸器装着
  • 隠蔽化の有無:中央割付、封筒法
  • マスキングの有無と対象者:マスキングなし

【N】470(本来は1372人が必要)

【介入】SBT施行前の設定で人工呼吸器に再度繋げて1時間休ませてから抜管

【対象】標準治療に従い、SBTクリア後にすぐに抜管
<その他>
SBTのやり方:T-tube/low-level pressure support/CPAP、SBT
SBT施行時間:30, 60, or 120分 各々の 臨床家もしくは施設毎のプロトコルに任される。
抜管後に再挿管するケースやNIVを使用するケースの判断は各施設の臨床家に委任
SBT成功基準:international guidelines の定義に従う
各施設は独自のweaningと理学療法を用いるため、抜管前に酸素化する/カフ圧を抜く前もしくは抜いている間に吸引/気管支拡張薬の使用/抜管後の酸素供給はやり方が施設毎に異なる。

【主要評価項目】48時間以内の再挿管割合

【副次評価項目】抜管後の呼吸不全、ICU滞在日数・病院滞在日数、 ICU死亡割合・院内死亡割合

【解析】

  • サンプルサイズ計算:
    コントロール群で、15%の再挿管割合を想定。介入群において5%の減少としてα0.05、β0.2で 各群686人の患者が必要と計算。
  • ITT解析の有無:有り

【結果】

  • フローダイアグラムの解釈(フォローアップ、除外):4317人の人工呼吸患者のうち、608人が組入基準を満たし、470人がランダム化。なぜか442人がスクリーニングされていない点で内的妥当性に問題があるかもしれない。なお自己抜管が111人。
  • 集団特性(内的妥当性・外的妥当性):平均年齢は62 vs 65歳、APACHE2は18.3 vs 17.8、COPD 14% vs 17%、再挿管の高リスクは83% vs 84%の集団。SBTとしてT-tubeが87% vs 94%で、SBT時間は120分が31.7% vs 20.7%の集団であり、外的妥当性にかけるかも知れない。集団はほぼ同等だがSBTのやり方に両群でばらつきがあるため注意が必要。
    CPAP 30min: 1.2% vs. 1.3%
    CPAP 60min: 1.2% vs. 1.3%
    PS 30min: 4.9% vs. 2.6%
    PS 60min: 4.9% vs. 0.4%, p<0.05
    T-tube 30min: 30.9% vs. 37.9%
    T-tube 60min: 26.7% vs. 36.1%, p<0.05
    T-tube 120min: 30% vs. 20.3%, p<0.05
  • アドヒアランス:介入群で9名が直接抜管している。
  • 主要評価項目
    48時間以内の再挿管率:35 (14%) vs. 12 (5%); OR 0.33; 95% CI 0.16-0.65; p<0.001
  • 副次評価項目
対象介入P
ICU死亡 11/243(4.5%) 11/227(4.8%)
院内死亡 20/243(8.2%) 23/227(10.1%) 0.52
ICU滞在日数 10(5-19) 11(6-18) 0.30
病院滞在日数 23(14-38) 26(17-43) 0.93

【Strength・Limitation】

  • Strength
    ・ランダム化試験
    ・多施設
    ・ITT解析
    ・事前プロトコルあり
    ・再装着を検証した初めての研究
  • Limitation
    ・サンプルサイズが少ない。統計学的に有意な差が出ているためβエラーはない。
    ・SBTのやり方や施行時間は統一されていない→現実的には全施設で完全な統一ができない以上、実践的であるともいえる
    ・二次評価の呼吸不全は主観的項目をはらむ

【論文の結論】
SBT成功後に1時間休ませることは、重症患者において48時間以内の再挿管率を減らす

  • 飛躍していないか

やや飛躍している。「T-tubeで120分やるのが主流のSBTを行い、かつ予防的NIVをあまりしないような施設では」という枕詞が必要。

【批判的吟味】
<内的妥当性>

  • 442人のスクリーニングされなかった患者があり選択バイアスの可能性がある。
  • 予定したサンプルサイズに到達していない。早期中止と同じように効果を過大評価している可能性がある。
  • 施設間で臨床がばらばらであり、治療が統一されていない。プロトコル化すべきである。
  • オープンラベルのためパフォーマンスバイアスがありうる

<外的妥当性>

  • ほとんどのSBTがT-tube、120分で外的妥当性にかける
  • 予防的NIVをあまり行わない集団

【Implication】
 SBTまでの管理をプロトコル化しなかったため、結局どう真似したものかわからないRCT。
 当院ではSBTはPS 5, PEEP 5の圧サポート下で30分行っている。ACCPガイドライン5 によるメタ解析でも圧差サポート下のSBTの方が、再挿管が少ないことが示されており、T-tubeを用いず、圧サポート下のSBTが推奨されている。時間も30分 vs 120分で再挿管率に違いがないため30分で良いという時代のためこの研究の外的妥当性は低いだろう。
 しかしこの研究から「SBTという作業はどうやら患者を疲れさせる可能性がある」ということを示唆しており、SBTをだらだら施行すれば(30分やって設定をもどさずそのまんま!!や120分やってしまったなど)、ちょっと一息してからの抜管の方がいいのではないかと思う。なのでSBT後に休ませるというコンセプトは有用かもしれないと私は思っている。なんらかの手違いでT-tube 120minをやってしまったらSBT後にちょっとひといきついてからの抜管がよいだろう。

【本文サイト】https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00134-017-4911-0

【もっとひといき】
ガイドライン:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012369216623243?via%3Dihub
SBTは何がよいか?SR+MA:https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-017-1698-x

【引用】

  1. Chest. 1997 Jul;112(1):186-92.
  2. Am J Resp Crit Care Med 167: 120-127)
  3. Chest 123: 1214-1221, 2007 Chest 131: 1315-1322
  4. Chest 2003 123: 1214-1221, 2007 Chest 131: 1315-1322
  5. Chest. 2017 Jan;151(1):166-180. doi: 10.1016/j.chest.2016.10.036. Epub 2016 Nov 3.

Tag:

このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学