ARDSに対する腹臥位療法は有効か?:【SR+MA】

【論文】
Munshi L, Del Sorbo L, Adhikari NKJ,et al. Prone Position for Acute Respiratory Distress Syndrome. A Systematic Review and Meta-Analysis. Ann Am Thorac Soc. 2017 Oct;14(Supplement_4):S280-S288. PMID: 29068269.

【Reviewer】Ryohey Yamamoto

【Summary】

  • 腹臥位療法は軽症〜中等度ARDSでは効果の大きさは小さい
  • 重症ARDSに対して12時間以上の腹臥位療法を行う場合に生命予後が改善するかもしれない

【Research Question】人工呼吸管理されたARDS患者に対して腹臥位療法は通常治療と比較して28日死亡を改善するか

【わかっていること】

  • 1970年から腹臥位療法が登場した。
  • 腹臥位療法ではventilation-perfusion matchingを改善し、呼気終末肺容量を増やし、肺損傷を防ぐと言われている
  • 初期の研究では酸素化の改善が報告されたが、死亡の改善は得られなかった。
  • より重症度の高いサブグループでは利益が示唆されていた

【わかっていないこと】

  • 腹臥位療法が死亡のアウトカムにあたえる影響

【仮説/目的】人工呼吸管理されたARDS患者に対して腹臥位療法は通常治療と比較して28日死亡を改善する

【PICO】
P:
人工呼吸されているARDS患者
I:腹臥位療法
C:仰臥位
O:30日院内死亡

【デザイン】SR+MA

【検索方法】
データベース:Medline、Embase、OvidSP, Cochrane Center Register of Controlled Trials.
検索後:サプリに記載
英語以外の言語:言語の制限を設けていない
期間:2009 to articles indexed as of August 8,2016
PRISMAガイドライン:記載無し

【対象】
検索された論文のデザイン:RCT
組入基準:成人のARDSにおいて腹臥位療法と仰臥位を比較した論文
ARDSの定義は研究による
除外基準:記載なし
評価者の数:2人、齟齬が出る場合は3人目が判断
質の評価:the Cochrane Collaboration risk of bias instrument(assessment for random sequence generation, allocation concealment, blinding of caregivers, and outcome assessment, incomplete outcome data and selective reporting and the use of important cointerventions)
・study's overall risk of bias to be high if any domain was judged to be at high risk of bias, with the exception of caregiver blinding, for which we accepted standardization of mechanical ventilation (while supine), sedation, and weaning in both study arms to mitigate performance bias in these necessarily unblinded trials.
RatingはGRADE

【N】2129

【主要評価項目】30日院内死亡

【副次評価項目】90日死亡、6ヶ月死亡、4日目のP/F、有害事象

【解析】Random effect model、事前のサブグループ解析を計画。
感度解析の有無:腹臥位療法時間、肺保護戦略

【結果】8つのRCT、2129人が組入れた。Blind以外のRisk of biasは低かった。

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主要評価項目である死亡に関してはrisk ratio [RR], 0.84; 95% confidence interval [CI], 0.68-1.04と有意差はないが、腹臥位療法で死亡が低下する傾向が見られた。

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サブグループ解析では、>12hrの腹臥位療法で死亡の改善を認め、five trials; RR, 0.74; 95% CI, 0.56-0.99、重症度の高いARDSでも死亡に有意差を認めた。

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【論文の結論】
severe ARDSでは12時間以上の腹臥位療法で死亡を減少させる可能性がある。
・飛躍していないか
いない

【批判的吟味】

  • 事前プロトコル
  • PROSPERO登録なし
  • 臨床試験登録サイトの検索はされていない
  • 論文の除外基準が不明 ・異質性が少し高め
  • 出版バイアスの可能性がある

【Implication】
主要評価の結果に有意差はないものの、信頼区間は腹臥位療法で良い方に偏っており、事前に計画されたサブグループ解析では腹臥位療法で死亡の改善をみとめている。PROSEVA研究でもP/F150未満のARDSに16時間以上の腹臥位療法を行うことで、死亡率の改善を報告しており、腹臥位療法を行う対象者としてsever ARDSでかつ腹臥位療法を12時間以上行うというのは理にかなっていると思われる。

【本文サイト】
https://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1513/AnnalsATS.201704-343OT?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub%3Dpubmed

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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学